李香蘭 「夜来香」

友人が台湾のお土産に石鹸をくれた。茶色のキューブ。天然素材。漢方薬の香り。まるで台湾版のラッシュだ。泡立ちも良く固いので長持ちしそう。

今日は坦々麺を作った。汁なしのまぜそばだ。ウーウェンと陳建一と迷って陳建一のレシピにした。よく知られているが坦々麺の創始者は陳建一のお父さんの陳健民だ。今日作ったのはそちらのスープバージョンではない。肉は入れない。ザーツァイを入れるのだが台所に無かったので割愛した。

usaoであれば材料も揃えずに性急に作りはしないだろう。でも作るよ。とにかくやってみたんだよ。

大量の刻みネギに練りゴマ、ラー油、醤油はほぼ同量。酢と味醂を少し。旨味調味料は無い。その類いは無い。何しろ中華はパン以外は滅多にやらない。usaoはラーメンが好きだったが自分では作らなかった。

食べてみる。

何かが足りない。

まずゴマの風味が無さすぎる。ラー油もあんなにも入れたのにまるで効かない。何もかもダメ。悲しくなった。

そうだな、次はラー油を手作りしよう。練りゴマは少し減らそう。肉は無しで正解だろう。坦々麺始まったばかり。

坦々麺の坦々とは担ぐの坦だそうだ。なんで坦々麺作ろうなんて思ったんだろう。自分でもよくわからない。

usaoは何だってあんなに北京料理にこだわっていたのかな。

中国東北部吉林省に延辺という町がある。そこは中国なんだけれど朝鮮族が住んでいる。自治区なのだ。usaoの中国人の友人にこの辺りから来日している夫婦がいて、その人の作る料理にusaoは衝撃を受けた。

朝鮮料理に似ていたのだ。野菜の切り方、スープの作り方。懐かしいけれど何処か違う。食べているあいだ続くエンドレスの間違い探し。

usaoは韓国へ旅行した時はがっかりした。まるで懐かしく無いのだ。何か違う。滞在中ずっとつきまとうなんだか騙された感。

在日のコミュニティはいわば意図せずにそうなった自治区だろう。食事のなんやかんやは時を超えて朝鮮族としてのエスニシティを強固に保った。しかも在日は朝鮮であることを負荷としていたからややこしい。何かが朝鮮で有れば有るほど圧力なのだ。

ニンニク、ネギ、唐辛子、胡麻。アジアのどこへ行ってもこういうフレーバーからは逃れられないのに。逃れようとしたのかな。usaoは。

延辺地区がそうであるように在日もまた混沌としている。1度延辺へ行ってみたかったね。そこは大陸なのだ。中国とはいえ今や北でも南でもなく、モンゴルやロシアが混ざっている、そんなフレーバーだという。

でも坦々麺っていうのはどうかな。usaoは言うかな。さようなら。今までありがとう。先に消えてみせたのはお手本だから。気負わず手を抜かず。

usaoが好きだった曲は沢山あるけど今日は「夜来香」を聴いている。

もしも延辺へ行ったら。

延辺の街でパクパクご飯を食べているusaoに会えるかもしれない。

そんな希望を抱いたっていいんじゃないかって。