Bobby Vee - The Night Has A Thousand Eyes

朝が辛い。目覚めるが起き上がることがなかなか出来ない。午前零時に寝て明け方4時には目が覚める。調子悪いなあ。鬱なのだ。診察で何か薬を貰うべきだったかもしれん。

わたしの不眠対策は単純だ。無理して寝ることはせず流れに任せるのだ。眠れなくても構わない。放って置く。累積睡眠負債はいつかは清算出来るはずだと信じるのだ。

昼寝はしない。

メラトニン分泌を改善するために根性で朝は定刻に起き上がる。

朝からあれこれと惣菜を作る。弁当だ。かなり適当だ。キャベツと玉ねぎはざく切りで炒め甘い感じのところへ少しのカレー粉を振る。獅子唐はしんなりと焼いて塩をパラリ。鶏ムネはピカタに。

調子が悪いので失敗が多い。昨日はミルクジャムが全く固まらなかった。

甘いゆるいやつでスコーンを焼くことにした。とりあえずオーブンを200度にセットしてみる。

何と無く生地をペタペタやりながら思い出すのだ。20歳の頃だ。風邪で出掛けた病院の待合で暮しの手帖をパラパラ。わたしは伊丹十三のエッセイを読んだ。彼はキャベツは炒めてウスターソースをかけると書いていた。

そういえばさっきキャベツ炒めたからな。ウスターソース何年も買っていないな。買うかウスターソース。作りたいな。伊丹十三好きだった。死んだな。

ペタペタを切り分け天板に並べる。余熱はまだだ。天板の余白が気になる。わたしはまた粉を測り塩とBPをぶち込み冷蔵庫からレモンジャムの瓶を取り出す。

あたしは美味しいと思うのだが苦味が家族に受けなかったのでレモンジャムは大量に残っている。ひとりちびちびとレモネードなど作るのみだった。

暮しの手帖伊丹十三を読んだのと同じ頃図書館で著名な料理研究家のエッセイを読んだ。うん、あれはエッセイだった。

わたしがレシピ本を一切読まないのには訳がある。書いてある通りに作りたいと思うのだが材料を揃えるのが苦労なのだ。そしてレシピ本の手順にはわからない記述が多すぎる。アスペなので行間が読めないのだな。今も動画レベルで無ければ他人のレシピを再現出来ないことは変わらない。

その著名な料理研究家のエッセイは大変面白い内容でわたしは彼女宛に長い手紙を書いた。いわゆるファンレターだ。しばらくして返事が来た。直筆の葉書だった。

あの時は本当に嬉しかったな。

そんなことを思い返しつつわたしはレモンジャムを水で割り、きっちり150ccを測り生地に混ぜ込む。さっきもちゃんと測れば良かったな〜。

ちょっとぎちぎちだが天板に12個、スコーンを並べると余熱が完了の電子音が鳴った。

焼成

空が明るくなって来た。わたしは調子を若干取り戻しマシンガンのように流しの洗い物を片付けスナイパーのようにバナナをプレートに切り分ける(どんなんや)。

エルはジューシーフルーツのボーカルに似ていた。診察で主治医にエルはどんな顔?って尋ねられた時ジューシーフルーツが出て来なかった。ええとボーカルの彼女の名前なんだったかな。わかんないや。「燃ゆる瞳」。いい曲だったな。

立ったままiphoneで「燃ゆる瞳」を検索するとボビー・ヴィーというアーチストがヒットした。そうかこれが原曲か。動画を見ると海パンでバイクに乗った白人の若者が砂浜で恋をするというPVだ。

歌はいい。声もいい。しかしこのPVはいかがなものか。

バックのモンキーダンスが素晴らし過ぎる。後半ビキニスタイルに昆布をまとった女性の舞いに脳をやられる。てかこれは間違い探しなのか?

長女が起きて来た。

わたしは画面をクローズして涙を拭いた。今日も一日が始まるよ。