オルゴール

オルゴールは人間の可聴域を超えた音を出し交感神経と副交感神経のバランスを保ちストレスを癒すという。可聴域を超えた音がどうして脳に良いのかは調べていないからわからない。そしてこういうのはアナログ音にのみ言える理屈だろうからiPhoneで聴いていてもおそらく効果は無いのだろう。それでもこのチロチロいう音が心地よいので結構ずっと聴いている。

生姜酵母の元種に近所のドラッグストアで買った安い強力粉と水を足してリフレッシュした。1日経った。野菜室を覗く。ビニール袋いっぱいに膨らんでいる。それでこの元種の半分を使ってまたパンを焼く。

元種に強力粉と水で1.5キロ弱の総重量。捏ねるというより引っ張り倒す。前回よりもバターを増やした。10分もたたないうちに生地は素直に扱い易くなった。生地はタッパに入れる。わたしはこの小学校のお道具箱サイズの大型タッパが大好きであれこれ入れて東西南北家中に15個くらいは持っている。

夜タッパを布団の足元に入れて眠る。タッパを避けるようにして布団の上にはオス猫が一匹。猫とパン生地とわたし。猫とパン生地とわたし〜。

野生酵母でパンを作っている人はわりといる。そういう本なら沢山出版されている。自分のパンの写真を撮って酵母の種類、種起こし方法、鍋かオーブンか、そういうことを書き添えた天然酵母パンの写真集みたいな本を一冊持っている。

東京都小金井市、主婦33歳、柿酵母で丸パン、酵母歴5年。

滋賀県、料理研究家50歳、ホシノ天然酵母で黒豆と松の実のパン、家庭用石釜焼き。

家庭用の石釜なんてあるんだ。うーむ。

本を買ったのは5年くらい前か。酵母パンとひとくちに言っても流儀は様々なのだ。そしてその時わたしが初めて起こした酵母はレーズン酵母だった。カルディで枝付きの無農薬のやつを買って来た。

オルゴールは福山雅治からミスチルへ移りそのあとは聴いたこともない曲が続く。

朝の片付けを済ませ、わたしはオーバーナイトしたパン生地を50gずつの丸型にして20個、ひとつひとつ丁寧に天板に並べていく。

長野県、44歳公務員、自宅の庭の木苺の酵母、パン・ド・カンパーニュ。ダッチオーブン

わたしはこの木苺酵母のカンパーニュの写真が好きでよく眺めている。深いクープが入った表面は黒く焦げている。骨太なパンだ。カンパーニュだから塩味だろう。

そしてこの44歳公務員さんは布団にパン生地を入れて一緒に寝るのだ。「発酵は自分の体温で、腰から20cm離れたところに生地を置く」とある。

説明の文章の感じ、名前からいっておそらく男性であろう。

パン生地と一緒に眠ったのは夕べが生まれて初めてだったが悪くない。そして何より朝が起きやすい。今朝まだ暗い中、猫とパン生地とわたしはいそいそとキッチンに向かった。

酵母は焼いたあとも発酵を続けるとあった。どの本だったか。

そんなわけはない。焼くのだからさ。焼いてバター載せて食べてしまうのだからさ。

切ないな。