清麹醬

チョングッチャンと読む。

 トリスペさんの納豆レシピで。

 アジアには納豆は結構沢山ある。ラオス、タイ、ミャンマー、インド、ネパール。マレーシアにもある。そして朝鮮にもある。

 子ども時代のことだ。日本の田舎だ。わたしの育ったコミュ二ティでは味噌、醤油を手作りしていた。豆で作る。わたしの知る限り、その手作り味噌は味噌汁を作る時に味噌湖しに砕かれた豆のようなカスが残った。

 醤油は味噌を作った時の上澄みを熟成させて作る。韓国醤油は旨味がある。いつまでも発酵が続くのだ。その醤油に生の蟹やエゴマの葉を漬ける。アミノ酸の増大。あのフレッシュ豆醤は今でも手に入るものなのか。

 朝鮮の納豆は枯草菌を増大させて作る。日本の納豆もこの枯草菌の仲間の菌で作っている。朝鮮の納豆と日本の納豆の違いはその芳香だ。朝鮮の納豆はすこぶる臭い。チゲの調味料として使われる清麹醬は塩気が強く味噌のような扱いである。加熱するとその納豆臭はますます強くなる。

 わたしは物心ついたころにはチョングッチャンを使いこなしていた。深くて強い納豆臭。食べるものは他には無い。臭いながらも美味しい食卓だったのだ。

 しかしわたしの母は違った。

 わたしは母に清麹醬をザルで洗うよう命じられていた。洗うことで粘りがとれ、臭みも緩和する。

 塩気が抜けた分はテンジャン(朝鮮味噌)で補う。

 母はおそらく強烈な納豆臭がご近所に漏れることを恐れていたのだろう。その時我々家族はコミュ二ティを離れ市街地の一戸建てに住んでいた。

 わたしは母が苦手な納豆臭をこれでもかと洗い流す。じゃ、入れなければいい?

 在日にとって朝鮮は負荷であり悲しみを想起させるトリガーだ。

 母は朝鮮が嫌いだったのだろう。

 気の毒な限りだ。

 わたしは今日、味噌汁にパックの納豆をドボンと入れてみた。

 懐かしい味わい。

 長女も婿も夫も顔をしかめるが全然美味しいから。

 チョングッチャンチゲもどきだ。

 お母さん、わたしも納豆好きじゃないよ。

 一緒だね。

 ちなみに納豆を洗うとナットウキナーゼは流れてしまいますから。

 気を付けて。