フリマで木彫り熊を買いました

電車があまり好きではない主人が青春18切符で何処かへ行こうよと言う。それじゃあ、とひとつ飛騨高山へでも行って木切れでも拾って来ようと計画していたが朝から土砂降り、山の方は難しくなった。西へ行けば晴れているだろうからと始発で東海道本線を西へ向かった。

京都に着いた。ホームのいっぱいの人に怯んで通過。大阪、人、人。明石から船で淡路島へ行こうよ、と言ってみるが主人はグーグー寝てしまい返事がない。

電車は昼ごろ終着駅姫路に。周囲の乗客は姫路城、姫路城と騒がしい。主人を起こし姫路城へと向かった。

白い。お城が白い。ねぇ彦ニャンはどこ?主人は機嫌良く歩いている。

城から出てお腹が空いていることに気付き持って来た菓子パンをベンチでパクパク。朝から何ご飯も食べていないわたしたちは互いに食べたいものを言い合う。

七輪でホルモン焼きとわたしが言うと、焼き鳥焼き鳥と連呼していた主人もあーいいねえとなり、城下町を七輪でホルモン焼きを探して彷徨う。

路上のフリマで埃まみれの木彫り熊を発見。大きい。思わず駆け寄って抱きかかえる。猫ほどの大きさがある。鮭喰い熊だった。

これ何処の熊?

何処って北海道だよ。

北海道の、何処?

そりゃわかんねぇ。こんなのは昔一家にひとつは必ずあったねぇ。

そうそう、テレビの上にね!

楽しくて値切るのを忘れて定価の千円で買ってしまった。

なんの木かわかんないけど重い。この熊名前はウィルね。よしウィルリュックに入れよう。ウィル重い。七輪でホルモン焼きはなかなか見つからない。

そうこうしているうちに露地裏の屋台続きの一軒に吸い込まれ、刺身と鶏皮揚げと肉豆腐にビール。

主人はネットで木彫り熊の画像をいつまでも見ている。これまで木彫り熊には見向きもしなかったのに、どうしたの?

いや、幾らくらいで売れるのかなと思って。

ウィル売らないよ。ウィル鮭喰いだから安いよ。旭川の熊だから。

ほろ酔いで電車に乗る。東へ帰るのだ。18切符だから日付けが替わるまでに帰らなければ電車がカボチャになってしまう。

主人はシートに座るやいなやリュックから木彫り熊を取り出し膝に乗せてしげしげと眺めている。

あーホルモン食べたかったー、値切るの忘れたー、駄目この熊顔が雑だわー、と悲しい言葉を連発するわたしがまるでそこに居ないかのように主人がひとこと。

‥‥可愛いなー。

えー。

わたしがジャルジャルのツッコミみたいになっているのを再び無視して熊を膝に車窓を眺めながらカップの芋焼酎をちびちびと飲んでいる主人なのであった。