おおつぼほまれ「ビスコッティ、ブラウニー、ニューヨークチーズケーキ」

シルバーウィーク。とうとう本職の方、左官業を営むM氏が雨漏り修繕工事に来て下さる。彼は長女のママ友のご主人である。屋根の裂け目に何か謎のペーストを塗る。屋根の素材によりペーストは違う。治りました。おお〜。ちなみにM氏の助手は将来は左官業に就きたいという中学生の男の子であった。いいねえ。

ママが最近パン焼かなくなっちゃってさ。

長女が言う。

どうやら北海道で二週間ライ麦パンのみで苦行したせいでわたしがパン嫌いになったと家族は思い込んでいるが、否。パン生活は形を変えて続く。

二週間種継ぎをせず放置した野菜室の野生酵母たちは酢酸発酵へまっしぐらケフィル種の方はカビも発生していた。みんなゴミ箱に捨てた。

ホームベーカリーは羽根の金属が腐食しており黒い何かが生地に溶け込むのでこちらも廃棄。

朝ごはんにローフ型のパンはもう二週間見なくなったが丸い塊だけがパンではない。

今日はクレープを焼いた。

クレープというと甘いお菓子だと思われているがあれはパンなのだ。薄焼きの無酵母パン。

今朝は2種類のクレープを焼いた。5歳のために小麦の白い薄焼き。これはバナナとホイップクリームとジャムを包む。もう1種類はそば粉100%のノルマンディガレット。生地を流して表面が乾いた感じになったら真ん中に卵をポトンと落として、ハム、酢漬けのタマネギ、チーズを乗せ四方を折り返して蓋をする。

おおつぼほまれの本はビスコッティが見たくて随分前に買った。ビスコッティについて舟田詠子「パンの文化史」p152には”大航海時代のもたらしたパン”とある。

コロンブスの航海誌には食料庫のビスコッティが海水で湿気ってしまったので海に捨てたという記述があるらしい。水分を完全に抜いたビスコッティは1年間品質変化がない素敵な行動食だ。

当時ビスコッティはスペイン、イタリア、ドイツとヨーロッパ中に広まった。乾燥させるために二度焼いた。ビスコッチョ(スペイン)、ビスケット(イギリス)、ビスキュイ(フランス)という名前はラテン語の二度焼いたパン、ビスコクトゥス・パーニス(bis coctus panis)から来ている。

舟田詠子は章の中でプンパニッケルにも触れているが「煉瓦のような重くて黒いライ麦パン」などと書いていて面白い。わたしはその煉瓦に似たパンを二週間食べたのだが肌も腸も調子が良くなりファイトケミカルを実感出来た。

コロンブスの時代、東洋や新大陸からの様々な食材が世界中に伝播した。トウモロコシ、ジャガイモ。そして多種多様なスパイス類。

そば粉の文化は北アジア発祥と言われるがブルターニュノルマンディには古くから蕎麦畑があるらしい。

韓国にはムッという食べ物があるが、そば粉を練って固めたものだ。韓国食材のお店に行くとドングリの粉で固めたムッを売っていてそれはそれで美味しいけれどわたしが子ども時代に食べたのはそば粉のムッだった。

秋に新そば粉でムッを作る。わたしの母は緩めのムッに生醤油を垂らして食べさせてくれたが、今考えるとあれはソバガキってやつかも。

話がそれたが、昔そば粉入りのスコーンを焼いたことがあるけれどサクサクを目指しているのかドッシリを目指しているのかイマイチ不明だったのを覚えている。沖縄のポーポーはふわふわテイストのそば粉の薄焼き。

この夏の北海道旅行は来たるべきわたしの老年期大航海時代を準備させるものであり、そんなこんなで主食的なビスコッティを現在考案中なのだが、品質変化の少ない行動食の加工の決めては乾燥である。

つまりカリッカリにするわけね。カリッカリにね。

‥‥あー、なーんかソバガキ食べたいなあ。

いやいやあかん、あれはモチモチやで。