アメリカン・ケンネル・クラブ編「犬の事典」

完璧な一冊というものは存在しない。この七百頁を超える犬についての一冊もそうだが画像に依る詳細を廃し限られた文字数で如何に個体の特質を記すかという点で評価出来る本である。

カレリアン・ベア・ドッグは現在日本に2頭いる。カレリアン・ベア・ドッグについての調査は続く。

アメリカン・ケンネル・クラブにはこの本が書かれた1992年当時で3600万頭以上の犬の個体が登録されている。全地球のこうした犬を一匹一匹「いい子だね」とやる組織は80あり日本のJKCジャパン・ケネル・クラブがそうだ。2015年現在JKCの登録犬数は138犬種30万頭余。この中にももちろんカレリアン・ベア・ドッグは無い。

カレリアン・ベア・ドッグには別名があるそうだ。カレリアン・ベアハウンド、そしてカレリアン・カルフコイラ。カレリアンというのはフィンランドのカレリア地方を指す。

カレリアン・ベア・ドッグは1945年FCI公認犬種として登録されていた。FCIというのは国際畜犬連盟(federation cynologique internationale)のことで、クマ犬君たち(カレリアン・ベア・ドッグの略)は『北方の猟犬』の括りだとある。

アメリカン犬好き組合(AKC)でフィニッシュ・スピッツはミセレイニアス・クラスといって雑クラスとされている。フィニッシュ・スピッツは『北方の猟犬』の一種であるからクマ犬君たちを含めおそらくはとにかく一頭一頭の性格がめちゃめちゃ違っていて大変なわけよ、みたいな『北方の猟犬』という括りなのかもしれない。まあ、憶測である。

クマ犬君たちはとても強いらしい。鳴き声も遠くまで通るそうだ。そしてむやみに吠えさせないというトレーニングが困難らしい。なまじ我慢強いクマ犬君たちは吠えるなの命令にどこまでも忠実に従っていつしか吠えることをストレスと感じて精神の病いに陥るなどという文献がある。適当が難しいんだな。わかるよ。

クマ犬君たちの従兄弟にライカ犬という犬がいる。あの辺の犬種にはライカというネームが多いので本当これもちゃんと調べたいのであるがラッソ・ヨーロピアン・ライカという犬種があり、1957年にロシアの宇宙船スプートニク2号に乗り単独で宇宙空間を地球の周りを60周回ったのちミッションを終え宇宙船内で薬殺されたクドリャフカ(巻き毛の意)という3歳の雌犬はこの犬種の雑種であった。野良犬だったのを宇宙犬に抜擢されたのだ。

クドリャフカはその姿勢の良さが決め手だった。船内は狭く実験は何日も掛かった。

言っとくがわたしはサイコパスでは無い。

クドリャフカに同情するのは容易いが彼女を訓練し宇宙へと放った訓練士の胸中を思うと薄っぺらい同情はしたくは無いのだ。

犬君たちをトレーニングするのはけして容易いことではない。

罰してはならない、打ってはならない、脅かしてはならない。これはドッグトレーナーの常識である。ドッグトレーニングの基本は信頼と一貫性である。双方に真の愛と尊敬が無ければトレーニングは成立しない。

犬を嘆かせてはならない。犬君たちは信頼の絆が強まれば強まるほど飼い主の嘆きに忠実に共鳴する。

犬がひとたび嘆くならその犬に再び勇気を抱かせることは難しい。彼等彼女等は繊細である。

クマ犬君に戻ろう。

クマ犬君たちが何故熊たちを躾けることが出来るのか、それはおそらく熊たちが犬に近い特質を持つからだろう。

熊は好奇心旺盛で記憶力も良い。知能が高い個体はクマ犬君たちを覚えるらしい。

こっち来たら噛むぞ。

クマ犬君たちが念じる。

乱暴はやめてよ。

熊が念じる。

里山エリアのところどころではこんなやりとりがあるに違いない。

もうあたし頭おかしいとか言われてもいいんだ。別にケンネルクラブとかに登録されたいとか全然思って無いもん。

だってあたし雑種だも〜ん。

ふんふ〜ん。