連載小説 小熊リーグ㉕

ウィルベアが叫び声を上げる。辺り一面にとどろき渡る遠吠えだった。ウィルベアが哭いていた。打つな、デポ注するな。僕はひたすら念じた。

「光盛さん教えてください。あなたがご存知でわたしたちが知らないことがあるのならば全て話してください」

驚いたことに突然ウィルドッグが光盛医師に話を始めた。

「‥‥君はウィルドッグだね」白川医師が言った。「そうです。注射打ったって無駄です。ベアもわたしも薬では消せませんよ」

その時僕の視界は突然暗転する。意識を保とうと懸命に努めるが、まるで誰かに操られているかのようにわなわなと脱力する手足をどうにも出来なかった。

記憶はそこで途切れている。