偕成社「ツキノワグマ」宮崎学

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昨日日曜日、主人とふたり午後いちで名古屋まで出た。三越百貨店へ熊彫りの木工教室を主宰する若いご夫婦の展示販売を見に行った。楢の手彫りの舟形ボード。湾曲面に現れる迷走する木目がなんとも美しい。もうひと回り大きかったらこれで川を下れそう。いやサーフボードかな?

そして我々は高島屋の地下のダルマイヤーへ。今日こそドイツのハムを買うのだ。グラム598円。高いなあ。発色剤を入れ忘れたことから出来たと言われる白いソーセージ。食べてみたいなあ。それにしてもこの店のショーケースはいつ見ても素敵だ。ドイツかぶれのわたしは何種類ものドイツソーセージに思わず見とれる。

予算は二千円。金はある。それに何を買うかはもう決めてあるのだ。プレーンビアシンケンとスパイシービアシンケンのスライスの真空パックをそれぞれ手に取る。60グラムをふたつ。これでもう千円。あとは何を買おうかとふと見るとミラノサラミスライスがグラム450円とあった。

よく見るとそれは特売コーナーのようなケースの中だった。残りは1パック。これ、と指差すとダルマイヤーさん(日本人だけど)が笑顔でパックを測りに乗せた。わー、200ある、どうしよう。ちょっと量はあるけどお得だよ、ダルマイヤーさんは言った。

ドイツのやつ買いに来たんでしょ、とフライデーが言う。冷凍してもいいのかな?わたしが尋ねるとダルマイヤーさんはダメなんだよ、いちおう本日中ってことなんだ。それに美味しくたべるなら冷蔵庫がいいよ。明日も食べられる?まあね、それは自己責任でね。帰りの電車で保冷剤入りのソーセージ袋を少し開けてみる。ナツメグがふわり香った。

ルッコライタリアンパセリ、スライスセロリを山盛り。人参しりしりを少し混ぜ込む。皿に盛りオリーブオイルをぐるり。ビアシンケンとミラノサラミを一枚ずつ被せると細かく削っておいたチーズを全体にわらわらと掛けた。

パンをニトスキでリベイクしてクリームチーズを開ける。赤ワインを注いでドイツだかイタリアだかわからない今夜のカルテスエッセンとした。我々は無言で香味野菜とスパイシーなソーセージを噛み締めた。

宮崎学ツキノワグマ」は二冊目。今朝読んでいるのは児童書の方だ。クマ関係は児童書の方が内容が詰まっていることが多い。優しい言葉使いである。

宮崎さんは写真家だ。そしてイヌが熊を躾けることは日本でも昔からしていたのだとある。眼光鋭く遠くの森を見つめて踏ん張る柴犬系の雑種が見開きページを堂々と飾っていた。

わたしは一旦本を閉じた。台所へ立つとミルクパンで牛乳を温めチャイを作る。カルダモン、クローブ、シナモン、胡椒。生姜はチューブをギュッとやる。ミルクは直ぐに熱々になり蜂蜜を垂らしぐるぐるとやってからマグに注いだ。

わたしはソファに戻ると再び雑種君のページを開いた。

そして熱々のチャイを啜る。

わたしは春が来て森を歩いている自分を空想していた。

おいおいまさかツキノワグマに会うつもりか〜。パトリックかフライデーか。

声はふたり同時だった。