ミカフェート「プルミエ クリュ カフェ」を飲みました。

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昨日は結局一日中雨が降りやまなかった。約束の時間に待ち合わせの本屋へ行くと薬物中毒かトーシツか、もしくは何か他の障害を持ったおじさんが本屋の店員たちを困らせていた。おじさんは呂律が回らない。時折力無くはやく警察を呼べと泣くような声で言ったりする。三女に電話。怖い。ここを出ようと思った。警察がおじさんを取り押さえるのを見たくはなかった。

三女と逢うことが出来、タクシーに乗る。ここへ行きたいんです。三女がスマホでカフェのホームページを見せる。ふうん知らない店だなあ。運転手は車を滑らせた。こんな雨で夕方だっていうのにもう俺んとこ30分も客が付かなかくてさ、運転手の声が弾んでいた。

わたしは障害者なので自治体からタクシーチケットを月に何枚か支給されている。初乗り分の金券だ。会計でチケットを出すと運転手たちはいつもとても優しい。ここは何が美味しいの?珈琲です。わたしはお礼を言ってタクシーを降りた。

ミカフェートはコーヒーハンター川島良彰が主宰するいわば産地直送珈琲サービスだ。川島良彰はもう何十年も珈琲ベルトを西へ東へ。現地の労働者たちと共に珈琲豆の在るべきかたちを求めて止まない彼の人生は今も継続中である。

わたしはもしも実物の川島良彰にあったら聞いてみたいことがたくさんある。ちょっと考えればわかるような子どもの質問みたいなことばかりだ。現地では赤い珈琲チェリーを普通に果物として食べるなんてことはするんだろうか。マダガスカルレユニオン島で森の中で自生する珈琲の木はいったいどんな景色の中で佇んでいるのか。カフェインの多いロブスタ種はあってはならぬ有害な珈琲豆なのか。

小熊に似たバリスタがわたしのテーブルにプルミエ クリュ カフェを運んで来た。一枚のカードをくれる。豆の産地、品種、作っている人の農園の名前、作っている人の名前が書いてある。ざっと見てからとにかく珈琲をひとくち飲む。ああわたしの舌がもう少しだけ味に敏感でわたしの脳がそれなりの厳しい何かを持っていたらと思うのだ。

珈琲はなんだかかっこいい。シアトル系ロースター。NYの舗道を珈琲を片手に颯爽と歩く外人。ここの珈琲は違いますよ、何故なら‥‥珈琲談義を繰り広げる雑誌のページ。

味、どう?

三女が尋ねる。

わたしは目を閉じる。わたしの脳内がざわついていた。森の中のジャコウネコさんが赤いロブスタ種をせっせと食べている。しろくまカフェのエゾリスさんたちはハンドピックに余念がない。会ったこともない川島さんの笑顔。どう?美味しいでしょ。彼は微笑む。

川島さん、あんた偉いよ。かっこいいよ。

どうです?バリスタさんにも尋ねられるのだがわたしはええと、ボディが有ってですね〜もごもご。

かっこいいことが言えないんだよなあ。よーし。この次はこんな時の台詞を練習しておくか〜。うきうきしながら窓の外を眺める。

雨はまだ降り止まない。