fridayusaoのブログ〜丘の上から

統合失調症でDID、読書と音楽鑑賞の日々の徒然。

スピッツ〜恋のうた

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スピッツの歌で「ビバリのこころ」というのがある。この歌が主人は大好きでお客さんが来ると必ず歌う。ギターはわたしだ。先日もやった。誰の曲?と客が聞く。主人は黙って2曲目。それが「恋のうた」である。

スピッツのアルバム「名前をつけてやる」を買った頃うちにはTVが無かった。わたしも主人も子どもたちになるべくTVを見せたくはなかった。TVというのは流れてくる映像を脳が受け止めるシステムである。TVに慣れてしまうと情報というものは流れてくるものだと思い込むようになる。情報は発信するものだ。それが主人の持論であった。

もっとも三女が生まれてすぐ主人が就職したての商社の出張で内モンゴル自治区への1ヶ月の長旅へ出てしまった時、わたしは近所の家電屋さんでVHSも観れるというテレビデオを主人の許可無く買った。それにはちょっと訳があった。

先日「ビバリのこころ」をyoutubeで聴いていたら長女が「これって誰が歌ってるの?」と言った。スピッツの曲でしょう、というと驚く長女。長女は長年この曲は主人(つまり長女にはパパです)のオリジナルだと思っていたなどという。スピッツのマサムネさんごめんなさい。

これってパパの持ち歌でしょ。と長女。それは確かにそうかもしれないがもとはスピッツなのじゃ。

CD「名前をつけてやる」を買ってきて聴いていた頃長女は7歳だった。だから「恋のうた」という曲はスピッツの歌だというにんしきはあるようである。「恋のうた」は「名前をつけてやる」に収録されている。

三女がまだ生まれて数ヶ月、次女は4歳、長女は7歳。朝TVをつけると「ポンキッキ」なるものが始まる。娘たちははしゃいだ。夕方5時には「お母さんといっしょ」だ。楽しいではないか。

数日前のことだ。ポストに一通の手紙が来ていた。知らない名前。女のひとだった。開けてみる。なんとそれは主人のいきつけの飲み屋さんの若女将からで、わたしたちは互いに好きになった、どうか別れてくれないか、彼をわたしに渡してくれないかというものだった。

わたしは戸惑った。どうしたものか。もしこれが真実なら、そしてこれがわたしの父や叔父たちにバレたなら、主人はおそらくボコボコにされ、コンクリート詰めにされて豊橋港に沈められる。そして実行犯である父や叔父たちは刑務所ゆきだ。彼女はどうなる。そしてわたしは、この娘たちはどうなるのだ。

わたしは手紙を丁寧に封筒に仕舞い引き出しに入れると3人の娘を連れて夕方の近所へ散歩へでた。

まだ生まれたばかりの三女は抱っこだったが長女と次女はわあわあと走り回っていた。風が気持ちいい。季節は思い出せない。寒くも暑くも無かったから春か、それとも秋か。

どんな人なのか。痩せているのか。髪の長さはどれ位。何故わたしに手紙の主が飲み屋の若女将であることがわかったかというと主人はついこのあいだまで無職。昼間からゆうべの酒が抜けず夕方にはまた飲みに行く、そんな日々だった。主人はたしかお金はそれほど持っていないはずなのにしこたま飲んでくるということはどこかに良い人がいるに違いない。わたしには少しずつ事情がわかりかけていた。

もうこれまでか。わたしは娘たちの姿を目で追った。これまで主人は頑張ってきたのだから、そろそろ解放してあげてもいい。DIDのせいだろうか。その日のわたしには嫉妬心が湧かないのだ。それよりもどうしたらこのことを実家の血の気の多い野獣のような暇人たちに隠せるかばかりを考えていた。気持ちが落ち着かずそのまま歩いて近所の家電屋でテレビデオを買った。

夜娘たちを寝かしつけてスピッツを聴く。買ったCDを聴く。「恋のうた」が流れた。わたしの中では主人が歌う「恋」のうただ。主人の恋。会ったこともない若女将と並んで仲良く酒を飲む主人の姿をわたしは思い浮かべた。

わたしの夫なんです。だからどうかわたしから夫を、この幸せな毎日を取らないでください。わたしは知らぬ間に泣いていたようだった。

内モンゴル自治区から主人が帰った。わたしへのお土産は翡翠のイヤリング。娘たちには空港で買ったお菓子だ。

夜ふたりきりわたしは主人に手紙を手渡した。主人は蒼ざめている。どんな人?私が尋ねると、彼女は夫と死に別れ、最近子宮の病気をした不幸な人だという。わたしは言った。

わたしたちを捨てるつもりなら覚悟してね。

殺すよ。

貴方もその人も。

それからわたしも子どもたちもみんな死ぬよ。今からこの家を燃やすわ。わたしはライターを手に取り着火した。

主人がその後どんな風にしてその後その人と別れたのかはわからないがわたしは誰も殺さなかったし家も燃えなかった(ちなみに借家でした)。

今日も主人が「恋のうた」を歌っているよ。

ということでスピッツの「恋のうた」は少し切なくて苦しい。ではではスピッツ「恋のうた」。ライブバージョンでどうぞ〜

http://youtu.be/gc8bmB-UBE8