博品社 ベルトルト・ラウファー「ジャガイモ伝播考」

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ベルトルト・ラウファーを調べていたらもっと面白そうな本にぶつかった。「スキタイの子羊」である。どうやら植物子羊つまり綿を初めて見たよ、という本らしい。ベルトルト・ラウファーはそんな時代の研究家である。

日本に於けるベルトルト・ラウファー研究の第一人者は石田幹之助Amazonで1冊購入した。発送したよと連絡があるばかりでなかなかに本が来ない。

「ジャガイモ伝播考」の前書きには「この一文にもならない文書」とベルトルト・ラウファーの論文が評されていた。「一文にもならない」。これほどの賛辞はない。金で解決できることはそれ以上でもそれ以下でもなく概して退屈だからである。

ジャガイモはナス科の突然変異らしい。そしてジャガイモはパイナップルとの比較において不運な歴史を持つとベルトルト・ラウファーは書いている。パイナップルは王族たちが好んだけれどジャガイモは民衆たちからしか愛されなかった。ふむふむ。

別に王族たちに褒められなくても不幸とは思わないだろうにと読み進むとジャガイモはやはり不運であった。ベラドンナという同じナス科の有害植物にその姿が似ていたのだ。人々は当初ジャガイモを酷く怖れた。そのようにしてジャガイモは迫害された、とベルトルト・ラウファーは書いている。

ジャガイモの学名は国によって異なる。ジャガイモにも国籍があるようだ。ブラジルでジャガイモはソラヌム・コッメルソニイと呼ばれる。それより古く一般的な学名がソラヌム・トゥベロスムでトゥベロスムはラテン語でジャガイモの意味だ。

ソラヌム・コッメルソニイは、とかソラヌム・コッメルソニイが、とかベルトルト・ラウファーは何かとコッメルソニイに言及する。この極めて発音しにくい名前の起源は人の名前である。1767年フィリベール・コメルソンという人が見つけた。だからコッメルソニイである。

ベルトルト・ラウファーはきっとジャガイモが大好きだったんだな。旨い〜ってなって調べてしまったんだろうな。違うかな。

なんやかんや調べている。ジョエル・ロブションはマッシュポテトにはラット種もしくはBF15種が最も適していると書いているがBF15種というのは病気がちな品種で今はあまり作られてはいない。

「kartoffelzaubereien」という題でロブションはジャガイモの本を書いていた。kartoffelzaubereienとはドイツ語でジャガイモマジックというような意味である。ロブションのドイツ料理集なのかな、仏語かな欲しいなと調べたら値段が2万円につり上がっていた。沢山は印刷されなかったのだ。

先週末もメークインを一袋(大体5.6個)皮付きで丸ごと蒸してプラコンテナで冷蔵保存、朝、熱したスキレットにグレープシードオイルを垂らして、5ミリほどの輪切りにした蒸しジャガイモをカリッと焼く。

同じスキレットで焼くのでも櫛形に切って並べてパルミジャーノのスライスと刻んだパセリをのせたりしているのを何かで見たが、それではロースト部分が余りにも少ない。見た目はかっこいいがむっちりとしたジャガイモの表面がカリッと焼けている部分は多い方がいいのである。

何かアレンジをと思わないでもないが結局毎朝輪切りのジャガイモを箸で裏返している。程良く焼き色がついていることを確認。ガスを止めあとは余熱で充分である。バターよりも塩だけの方が美味しいように思う。微塵切りのパンチェッタを一緒に焼いて2、3粒のせてパクッと食べる。

メークインは男爵よりも少しだけ値段が高い印象である。それほどサンプルを試してはいないけれどメークインのほうが断然美味しいと感じている。味ではないかもしれない。身が固くて扱いやすいだけなのかもしれない。

この「ジャガイモ伝播考」を翻訳した福屋という人は後書きで何人かの専門家に謝辞を述べているがその中に荻巣樹徳の名前を見つけた。荻巣樹徳。彼の本は面白かった。中国の奥地へシネンシスの原種を見つけに行く話だった。

シネンシスはバラであるが彼はいつどの山の斜面でどんな発育状態のシネンシスを見てもそれと見分けられるようにとにかくシネンシス族を見続けたとあった。バラはいつ何時も花を付けている訳ではない。葉、茎、蔓などシネンシス族の特徴を脳に叩き込んだのである。

なんでその荻巣さんがジャガイモのことを。荻巣さん今どこで何を探して旅をしているんですか。

コッメルソニイを見つけたコメルソンさんは世界一周旅行の途中だった。

来年の春からは畑にジャガイモを植えたいと考えている。とりあえずメークインじゃなくてもいいや。ジャガイモだったらもうなんでもいい。ジャガイモ掘れるなら手のひらの豆を潰してもいい。ジャガイモを作りたいよ。

わたしは断じてジャガイモを迫害しませんぞ。