わたしはマット・デイモンが無条件で好きだ。「オデッセイ」は既にTSUTAYAでレンタルされていた。ついこのあいだ劇場公開されたとばかり思っていた。烏兎匆匆。慌ただしく過ごしていたのはわたしだけではなかった。
驚いたことにマット・デイモンは火星でジャガイモ栽培をしていた。ちょっと待って、火星の怪しげな土壌で栽培されたジャガイモが催奇性を帯びる可能性はないのだろうか。古くなり緑化したジャガイモがソラニンという神経毒を多量に持つことがある。
大丈夫だった。忘れてた。これ映画だった。この半年間、ジャガイモ栽培のシュミレーションを重ねているわたしはマット・デイモンが他人とは思えないのだ。そうね、ケチャップないとつらいよね、うん。
深手を負い自ら外科処置をする羽目になり酷く痛がるマット・デイモン、ビタミン不足等で激やせし、頼みの綱だった食糧輸送プロジェクト遅延など過度のストレスから打ちひしがれ満身創痍のマット・デイモン。
これでもかとひどい目に遭うマット・デイモンの演技が素晴らしい。全く魅せてくれる。これはマット・デイモンのプロモーション映像である。
サブリミナルのようにちらちらする脇役たちもキャラクターを詳細に描いていてこの脚本が圧巻である。
槇原敬之似の黒人の職員は何故あれほどまでにネガティヴなのか。「ああ彼は今どんな気持ちで‥‥」。彼の苦悩にもたっぷりと癒された。NASAの採用試験に脳天気という項目がないことがわかりなんだか嬉しかった。まあ映画だけどね。
高い確率で1人が死ぬのと低い確率で多数が死ぬのとどちらをとりますか、という部下の言葉で博打に出た悪そうに見えたボスも良い。NASAに俠気があるとは意外な場面であった。
特筆すべきはディスコミュージック好きの船長女子だ。わたしは軍人よ、もう誰も失いたくないの台詞は泣けた。この台詞いつか使いたいなあ。わたしは広い意味でソルジャーなのよって。だからこれは戦争を支持してるとかではなく、ね。
娯楽映画としては文句なし。
マット・デイモンが学者で社会的地位を持っているというだけで、それだけでいかにも映画だ。いやわたしは嬉しいのだ。マット・デイモンは病んでるだけの弱い男ではない。
つまりわたしはマット・デイモンとNASAに著しい偏見を持っているのだな。
そんな確認を出来て良かったかと思う、うん。