ビジュアル辞典の愉しみ

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ドイツ語の文法は面白い。ドイツ語の作文に文肢(ぶんし)というものがあるのだが、文肢などという日本語には初めてお目にかかった。文肢とは強調したい1語のことで、文肢は文頭に置かれる。文肢は名詞でも動詞でも”今日”とか”明日”とかいう修飾語でもいいらしい。

だからドイツ語は文頭の1語を大切にする。文肢は1語でなければならないとある。言いたいことはひとつだけにしておけ。ドイツ語とはそんなつれない言語であるようだ。

名詞の変化は4種類あるが特に可算名詞の複数形の法則性にはお手上げである。こんなこと自慢でもなんでもないけど名詞の変化の何がしかの法則の一覧表には瞬時にギブアップした。だけど誰か文法学者も「覚えた方が早いよ」と書いているのを読んだことがある。

スペイン語と英語が出来る三女の婿の本棚に英語イタリア語ドイツ語フランス語スペイン語の5カ国語のビジュアル辞典があった。これがとても面白い本だったので同じシリーズの英独版をAmazonでワンクリックした。

ドイツ語の名詞には男性女性中性がある。これらの性別分けは二千年の歴史がありそこに論理的整合性は全くないらしい。

今日は朝からフルカラーのビジュアル辞典を楽しく読む。植物の頁。一本の木。根っこと樹皮は女性だが幹と枝は男性だ。父親というドイツ語は男性名詞で母親は女性。子どもという語は中性だ。

ドイツ人として生まれた子どもは生まれつき名詞の性別を脳内のDNAに乗せているわけでは無い。子どもたちも間違えながら覚えていくのだとあり、わたしの買った文法書の著者は日本語の動詞の”れる、られる”や謙譲だの尊敬だのしち面倒な敬語たちを記憶せねばならない諸国の外国人たちの抱く日本語への絶望と比較すればこんなことなんてことは無い、などと書いている。まあ唸るしかない。

ちなみに金属や薬品は中性名詞であるからなんだか納得だけれど牛乳とバター、マーガリンは女性なのにアイスクリームとチーズは男性である。サワークリームは?‥‥女性だった。まあサワークリームは女性っぽいといえばそうだよね。細かいことだが白カビチーズの皮の部分は樹皮と同じ呼び方をするからそこは女性冠詞をつける。

ドイツ語以前の北欧ゲルマンの言葉には2種類の中性名詞の概念があった。ウトルムとノイトルム。ウトルムはラテン語で「どちらでも有る」で、ノイトルムはウトルムの否定で「どちらでも無い」で、ノイトルムは英語のニュートラルの語源であるという。なんだかこういう話はわくわくして楽しい。

わたしはDIDなので普段はウトルムで過ごしている。わたしの脳内には女性人格もいるし男性人格もいる。

しかしながらミスチルを聴いているわたしは限りなくノイトルムだ。わたしをリラックスさせる音楽が鳴るときにわたしは脳の四隅にささやかながらも余白をしつらえるようである。

ノイトルムな余白はときに様々な音の風になびいて揺れる。わたしはノイトルムな余白で寄せては返す音の高波が近づくのをそれは楽しみに待ち構える。

しかしながら北島三郎を聴く時のわたしは男性人格でスピッツを聴く時のわたしは女性人格である。これは50ん年の人生経験で出来た緻密な脳のシステムだからそこは割と整合性をもっていて、もやもやしつつもなんとなく区別はついている感じですね。