織部ヒルズTOKIへ行きました

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https://youtu.be/DV82VvS7SP4

(チコ&ザ・ジプシーズ/パッヘルベルのカノン)

出来事の記録。昨日隣に住む友人の車で織部ヒルズTOKIへ。わたしは初めてだったけれど友人は結構行きつけていた。お金持ってきたかと訊かれて財布に三千円あるけどこの三千円が月末までの小遣いだと答えた。

織部ヒルズTOKIというのは敷地内に陶器ショップがずらりの並んでいるちょっとしたタウンだった。わたしは陶芸にはこれといったこだわりはないのだが流れで付いてきてしまった。

友人の目当ては織部焼きの皿。焼き魚が丸ごと載るやつが欲しいといいつつ菊の花を形どった丸い皿を手にとって悩んだりしている。わたしは暇だったので店内に配置してある蝋で作ったサンプルを集めてみた。

獅子唐の串、鶏モモの串、つくねの串等串物サンプルを5本集めて友人に手渡す。皿に載せてみる。おお〜、いいねえ。何店舗かみて回ったがこれだという皿はなかなかないらしい。我々はひやかし放題で織部ヒルズを後にした。

ベルばらを読んだかと尋ねるとそんなもの知らんと瞬殺。友人とわたしはほぼ同い年だが彼女は6歳で父親と死別。細腕の母親を助けながらの半生だった。漫画本を読んだり映画館へ行ったりする楽しみは一切なかったと笑った。

あのさ。何?あのさ。何?初恋ってした?わたしは思い切って尋ねた。友人は大笑い、ハンドルを取られる。何それいきなりやめてよ、と散々馬鹿にされつつもわたしはわたしという人間には実のところ初恋経験がないのだと打ち明けた。

友人は徐ろに自身の初恋を語り始めた。相模原市の海岸近くのテニスコートでのひと夏の出会い。彼にね、言われたのよ、君は大人びてるね。いつの話?小学校の高学年かな‥‥。

まだ子どもじゃん、ダメだよそんなの。何言ってんの、初恋ってそういうものよ。ふうん。ホントに初恋ないの?忘れちゃったんじゃないの?

わたしは「昼休みの放送室のわたしと猿」というわたしの物語を掻い摘んで話した。友人は大笑いだ。いやこれは笑う話じゃなくてさ、でもドキドキしたとかトキめいたとかそういうんじゃないんだよね。

これ夫に話したらさ、やっぱりこれも初恋なんじゃないって言われてさ。夫はちゃんと初恋があるんだよね。フルネームも覚えてたし、初恋の人と結婚したら不幸になるんだよ、ってわたしが言ったらそうかもね、なんて遠い目をしてさ。

友人は駐車場に車を停めた。ここどこ?多治見市。友人は割烹料理屋のようなところへわたしを連れて行った。和風庭園を抜けて土間で靴をぬいで上がる。そこは陶器ショップだった。

友人は真っ直ぐ進む。お気に入りの作家のコーナー。1万円もする皿を見ている。高いよ、割れたらどうすんのなどわたしは言ってはならない言葉を連発。視線を感じて振り返ると店主がわたしを熱く見ていた。

友人はわたしにレンゲの場所を教えた。わたしはレンゲが好きなのだ。とりあえずレンゲでも見ておけということか。果たしてレンゲはじっさいそれでお粥を食べてみないとその良し悪しはわからない。つるんとしているか、大きさはどうか。

帰り道友人は亡くなった父親のことを長く語った。葬式の時父親の棺に釘が打たれると友人はその場に突っ伏して大泣きし大人たちを困らせたという。彼女の父親はパティシエだった。父親の手作りのサヴァランの味を今でも覚えているという。

サヴァランてお酒のパン?

友人はわたしの初恋はあのサヴァランだったと言い長いあいだ黙ったまま車を走らせた。