青竹

暑い中をリュックを背負って近所の図書室まで行って来た。島ぞうり(5月の沖縄旅行で380円で買った)(こればっか履いている)にTシャツ、帽子、リュック。強い夏の日差しと蝉の声。これで握りめしほおばったら、野に咲く〜って歌いたくなるね。

いつもは主人の車で20分ほどの中央図書館(私たちは本店と呼んでいる)へ行くが、今日はソコトラ島の本が欲しくて出かけた。検索したら近所の図書室にあったのだ。市民センターに併設された図書室だから本の数は少ない。限られた冊数の本棚を1段1段丁寧に見ていくが、1時間もあれば全部見れてしまう感じだ。

ソコトラ島の本は旅行のコーナーにあった。うんうん、写真が多い、いいかも。ソコトラ島アラビア半島の南にある。生育する植物825種のうち固有種が307種。年間降水量200ミリというカラカラの気候。ソコトラ島には奇妙な樹や花がいっぱい生えている。西畠清順というプラントハンターの本にソコトラ島は取り上げられていた。usaoは今ソコトラ島に夢中だ。

快眠法の本とランニングの本も借りる。眠剤はもう2週間ほどのんでいない。その代わり離脱症状なのかな、ここ数日幻視がひどくなって朝走れなくなった。ひどいといっても長年のことなので慣れているはいるが、暗闇にいろいろな姿かたちの物体がうごめいているのだから本当に走りにくい。眠剤を切ったのと幻視は関係あるのかな?

内田洋子のイタリアの本を2冊借りた。イタリアの本を時々読む。ウンブリアとトスカーナについて書かれた本をコツコツ買い集めている。イタリアについて読み始めたのは5年くらい前だ。私は車の免許もないし、金もない。そして主人はイタリアにはまるで関心がない。いつか北イタリア旅行がしたいのだが無理だろう。

最後に山本周五郎全集の中から今日は「赤ひげ診療譚」を選んだ。20年ほど前に1度読んだことがある。確か精神病を扱っていて、その時はちょっと怖くて走り読みをした。

山本周五郎は常時3冊くらいもっている。私は旅先でBOOKOFFに入るのが好きだ。街の数だけBOOKOFFがある。掘り出し物に出会った時は嬉しいものだ。山本周五郎の文庫はたいていどの街のBOOKOFFにも溢れるほど並んでいる。本棚の本を増やさないように努力しているのだが、そうやって買ってきた文庫本が結構ある。

「青竹」は新潮文庫「おさん」に収録されている。大好きなお話だ。ラストで男泣きするシーンにホロリとくる。他のDIDさんはどうなのかわからない。私は若い時代まさしく青竹だった。DIDは情報を収集して条件を分析して行動を選択する。あれもしたいこれもしたい、という時は状況に応じて優先順位を定める。大人になってもう団体行動をしなくてもよくなったから私は益々ビジネスライクを極めていった。自分の感情を持て余すことなどなかった。DIDは悲しいものだ。マニュアルに応じたスキルを駆使してやっつけ仕事をひたすらこなすのみだ。

35を過ぎて治療が始まり病院へ行くようになり私はようやくちゃんとした人間になれたような気がした。悩んだり、泣いたりする。怖いと感じることもあるし、何かを引きずる女々しいような心もちゃんとある。

ここ数日ジョギング出来なくなって悩んでいる。主人に早速相談した。一緒に走ってあげようか?とはじめ言ってくれた主人だったが「もやもやとした人間とも動物ともつかない透明なものが明け方の暗い路上にうごめいていてね」「それはみんな私の分身なの」「私を助けようとして出て来てるの」。丁寧に説明すればするほど主人が引いていくのがわかる。

「薬、のんだら?」

主人が言った。

だから!

快眠して、ジョギングして、健康になって、眠剤フリーにしてっていう流れなんだよ!

私はだんだん言葉がきつくなる。

usaoが言う。

薬、のんだら?

あんたもか!