MOCO’S キッチン

今福龍太が好きだ。今福龍太はすごく沢山本を書いている。だからそれを読めばいいんだけど今今福龍太が何を考えているかが知りたいと思うのだ。今今だ。

「cooking for geeks」をずっと読んでいる。何がどう脳に貼り付こうがお構いなしだ。ホットケーキの平均値。地獄の厨房という怪しげな料理番組(観たい)。キッチンを初期化する。低温真空調理。そして何人もの食品エンジニアと呼ばれる人たちがタンパク質の凝固や味覚、食品添加物(塩だってそのひとつ)についてのインタビューに答えている。

アイザック・ニュートンという人がいた。ニュートン力学を創始した。今や力学は発達した。相対性理論量子力学流体力学レオロジー。どれもこれも目の前の何かの平均値を出すのだ。

平均値。

ヴィルトゥオーゾという言葉がある。19世紀の芸術を指す言葉だ。もし何かがヴィルトゥオーゾを目指すというなら19世紀に戻ればいいと考えることがある。

ヴィルトゥオーゾという言葉が好きだ。古臭いとかバタ臭いとかそう意味にしか使われない言葉だが私の愛する何かはみな古臭くバタ臭い。仰々しくもたついている。

牧場で驢馬と触れ合う。もはや荷役を解かれコンパニオンアニマルとしてはアスファルトに拒まれた彼や彼女たちは大いなるヴィルトゥオーゾだ。

今福龍太はどう考えているだろう。

クレオールの権威。35年間のあの世界戦争は緩やかなクレオールをめちゃめちゃに壊した。移民であること。移動中であること。列車から見える景色だけを僕は信じると、彼はかつて書いていた。

平均値はそんなに大切か。

私は何処へ向かっているのか。

私のヴィルトゥオーゾは過去に戻ることなのか。違うはずだ。

usaoならここで本を閉じるだろう。私は読むよ。そして考えるのだ。答えが欲しいわけじゃない。流体力学なのだ。私もまた変質してゆく。かけ間違えたボタンを直すには1度外す必要がある。もう何十年も脳内はめちゃめちゃなのだ。もう一度混沌へと旅に出ること。兎たちを連れて行くこと。眠った方が良い?そうかも。