柴田書店「クイックブレッド・アンド・ジャム」

柴田書店の本が好きで柴田書店というだけでぱらぱらやってしまうくらいだ。数年前これでもかと図書館で借り続けた挙句買った本が数冊続けて全て柴田書店だったりしたことがあった。

 日本橋の大きな本屋で本棚一段全部の柴田書店を立ち読みし続けたことがある。中にはおよそ自分の日常には関係のなさそうな柴田書店もあったがまあ柴田書店が出版しているんだからちょっと見ておくかとなるのだ。

 「クイックブレッド・アンド・ジャム」は福田里香の本だ。福田里香柴田書店というより文化出版局やマガジンハウスという雰囲気がある。クウネルとかね。勝手なことばかり書く。これがブログというものなのだ。感じたことを書くまでだ。

 「クイックブレッド・アンド・ジャム」は作り方の手順の説明が雑だったり、行儀の悪い若い人たちのボケたポートレートが紙面を占めていたりで好き嫌いの分かれる本だろう。

 わたしは「クイックブレッド・アンド・ジャム」を手にしてからすっかりこの本が大のお気に入りとなった。うちへやって来る関係者がわたしの本棚を眺める。やがてこの「クイックブレッド・アンド・ジャム」を手に取る時、わたしはしばらくはドキドキが止まらない。

 なんだか暇な時、または何か面白いことがないかなという日には来客を本棚へ誘いすぐさまこの「クイックブレッド・アンド・ジャム」を手渡す。彼また彼女がこの本をぱらぱらやりながらクスリと笑ったり時々顔をしかめたりするのを眺めているのが楽しかった。

 手の込んだフレンチのデザートのようなものを作りたいと思わないのは自分が不器用だと知っているからだ。甘いものと言えばそれは甘い、またはすごく甘いの2種類しかなく、フレーバーだの食感だの全く面倒極まりないと偉そうに言っているところがあるがつまりはわたしは逃げているだけだ。

 「クイックブレッド・アンド・ジャム」をぱらぱらやるとわたしの内面はリセットする。こんなにベーキングパウダーを入れてるよ、とかせっかくのパンケーキに黒ゴマペーストをどっさり混ぜておやおやパンケーキが真っ黒だよ、とか何時読んでも楽しいのだ。凝り固まった脳内が気持ち良く解れてゆく。

 ぱらぱら。ここだ、このページね。白いTシャツにベッタリ。イチゴジャムで手形を付けてるよ。胸に赤い手の痕だ。

 君のハートがイチゴにしてやられるその前に

 jammin'しよう

 とっておきのスペシャルな砂糖でさ

 そこにはそんな言葉が英語で書かれてあって、次のページから沢山のジャムのレシピが続いてゆく。jammin'とは壊すとか妨害するとかそんな意味か。真面目人間のわたしはそのページを見るたびに、いや、ちょっとぉ〜、Tシャツが汚れるっしょ〜、となる。それがなんか脳に良い。

 今日はp52のルゴラックを見ている。ルゲラ、ルガラッチなど呼び方は他にもあるようだ。

 なんでルゴラックのページなのかっていうと、シナモンロールなのだね。福田里香はルゴラックのシナモンロールのページにこんな散文を寄せている。

 コーヒーかティに甘いもの。

(中略)

 試しに5回続けて打ってみた。

 ほら

 あなたもお茶がしたくなる?

 今週シナモンロールtake5。生地を長方形に伸ばし、シナモンシュガーの上からラムレーズンと砕いた胡桃を一面に敷き詰めた。それを生地にそっと押しつけてから、ゆっくりと巻いた。

 焼きあがりはもちろん美味しかったが生地の油脂が少な過ぎてせっかくの胡桃等が生かされていない。

 ルゴラックにはサワークリームを入れる。福田は砂糖を少なめ、バターは多め。サワークリームを入れるのでアイシングは粉砂糖のシンプルなやつだ。甘いか甘くないかって言ったらどうかな。うんいや作ってみないとそれはわかんない。

 福田里香のこのPBブレッドの本のこのルゴラックのページが見たくて昨日三女の家に行ってきた。この本が本棚から無くなって、わたしはすっかり硬派な人間の振りを続けていたのに。

 こうなるんじゃないかって思ってたよ。ジョージが腕組みしている。

 でもさ、柴田書店だからさ。

 なんつっても柴田書店だからさ。