ポプラ社「きゅうり好きのきゅうりの食べかた」

朝食を朝5時に摂るので10時ごろにはお腹が空いてしまう。ところで夫はまた会社を辞めてしまった。そしてそれを言い出せずにいてがさがさと早朝活動するわたしの背後でうろうろ。結婚して30年。親と居た時間より長く過ごしてきたからこの人の考えてることは割とわかる。まあ分かり易いところが彼の個性でもあって。

 会社を辞職したことのある人ならば誰でも思うことであるが辞めようかなどうしようかなという決定ではなく辞める時の手続き等なども結構煩わしいものだ。夫はより良い仕事場を見出だしては尺取り虫のようにエネルギッシュに進む。今朝も既に次の職場の面接に今日行くからという業務連絡。

 昨日午後「伝統工芸の創生-北海道八雲町の「熊彫」と徳川義親」大石勇著が届いた。早速読んでいる。

 熊の本どう?面白い?夫が尋ねる。

 長い結婚生活だがわたしの関心事と彼の関心事がリンクすることはあまり多くない。わたしたちはまるで違う星に住んでいるかのようにことごとく異なっているのだから。わたしは今、中年男と熊の関係性についての論文を執筆中であるのだがこの夫君はサンプルにはならないだろう。まあ猫好きではあるが。

 義親はどうやって北海道へ行ったのかな、もう機関車が走ってたのかな。わたしは呟く。今日も雨だね、畑草ぼうぼうだ。夫が言う。そう言えば青春18切符もう売ってるよ、買う?ミーティングは続く。

 大石勇という研究者は東京の徳川林政史研究所というところの先生だった。誠実さの滲み出る文章がいい。凸凹のない文体。リズム感。一見とっつきにくいが長く親しめば味わいがある。そういうものにわたしは成りたい。

 またしても無職となり暇な夫と図書館へ。「クマのプーさん全集」をまだ読み切れてない。貸し出し延長を願い出るとカウンターのお姉さんが否と言う。なんでも本の状態が悪いのでこの本は廃棄して新しく購入するなどと言う。

 わたしはまだ読みかけのこの全集をどうしても持って帰りたい一心でいやけしてこれはボロい本ではない、これでも十分読めるから貸して頂戴と食い下がった。するとお姉さんが引き出しから『状態悪し』というシールを取り出しペロンと表紙に貼ってくれ一転、本を持って行ってもいいと折れてくれた。

 言ってみるもんだ。何事も交渉だ。

 そのあと4階のむつかしい本の棚で見つけた赤木明登という人の美術評論を2冊借りる。これまで何度か評論は書いたことがあるが文学ジャンルだ。そして何をどう書いてもわたしの文章は小学校の作文のように四角四面になっていく。そしてそれでいいと心から思っていて発展というものがない。ちょっとかっこいい評論というものを読んでみたかった。

 雨が降っている。こにしさんのブログの散文を読む。ピヨピヨさんは旅行中でリコさんは沢庵を炒めた。ハンドドリップさんは忙しいのでブログを閉じるとある。

 わたしは胡瓜を作りそびれた。

 ポプラ社「きゅうり好きのきゅうりの食べかた」を隅から隅まで読む。12人の胡瓜マイスターによるこの本を読むといつも心が浮き浮きする。

 だよね〜。

 ひとり呟いてみる。