ハンモックに寝てみました

日曜日。夕ご飯に主人がコロッケを作るというので買い物へ行ったがコロッケの材料を一式買い求めたのち栗を一袋買った彼の脳内は一瞬にして栗きんとんでいっぱいである。

男爵を茹でて潰し挽肉炒めと合わせて丸めている。おお、おおおお、上手いではないか。なんと器用な。彼は初めてのコロッケ作り。小判型にこだわっていたが思ってたよりも柔らかい生地で成形が困難、急遽球状に丸め始める。大きめのゴルフボール。

そうこうしていると夕方三女夫婦が自分等の不用品の処分と称して様々な物を箱に詰めてどかどかやって来た。なになに〜?あんなもの、こんなもの、まあいろいろである。その中にハンモックがあった。

二十歳のころ、わたしはハンモックを持っていた。どうにかこうにか自室に設置、その時は乗り方を知らず、しかも早る気持ちを抑えられず乗ったが早いかすぐに落ちたのを覚えている。

誰にも邪魔されないようにと静かに寝室の和室の梁にロープをぐるりと通す。こんなところにハンモックを吊り下げたら主人はすごく怒るだろうな。わたしはいま一度台所でコロッケと格闘している主人の後ろ姿を確認し、もう一方のロープを縁側の方の梁にぐるり。

乗るよ。ほら、ほらほら、落ちないよ〜。

三女と三女の婿が心配そうに見ている。婿は何やらギターで弾き語りをはじめた。ハンモックから落ちたとかいう歌はやめてよ〜。

ロープを揺ら揺ら揺すってみる。ゆーらゆーら。いいなあ。いいなあ。

しれ〜っと台所に戻り、何事も無かったかのように茹で上がった栗のお湯を捨てる。去年も確か彼は栗きんとんを作った。そして昨日の夜は栗入りのシュークリームを食べていた。彼は栗男子なのだ。

もう間もなくコロッケが完成という頃に誰かが栗ご飯が食べたいと一言。もうご飯は炊いちゃったよ。じゃあ栗を混ぜればいい。バターも入れようという声。栗男子の栗きんとんは延期されたがコロッケに栗ご飯という豪華な宴となった。

客人たちが帰った。風呂から出てわたしはハンモックでゆらゆら、揺られながら音楽を聴く。

MSG「イントゥ・ジ・アリーナ」。

高校時代この曲もマイケル・シェンカーもすごく嫌いだった。なんで嫌いだったのか、それはわからない。なんだか笑えるな。すごく嫌いって言える今がとても快い。このリフレイン覚えてる。わー、やだやだ。ねぇこれ、フライングV!やだよね、ね、わたしはゆらゆら、ソファでクックパッド検索に余念の無い主人に話しかける。

どうでもいいけどフュージョンもハンモックもお願いだからやめてくれない?

よし、もう一回聴こうっと。

あれ、ひょっとしてあたしこの曲好き?ねぇ、好きなのかな?

知らん!

あー主人が怒ってるよ。ゆーらゆーら。怒ってるよ〜。ゆーらゆーら。

(ハンモックは間もなく撤去となりました)