わたしがこの曲を初めて聴いたのはスピッツがまだインディーズレーベル”ミストラルズ”時代のアルバム「ヒバリのこころ」だった。
mistralはフランス語。ミストラルは通常冬から春にかけてフランス南東部に吹く。アルプス山脈から地中海に吹き降ろす冷たく乾いた風のことを指す。
在りもしないモノが目の前に現れ、強い感情を抑えられなくなりその場に騒動を引き起こす。これがわたしの病気。困ったものだな。
発売当時、アルバム「ヒバリのこころ」の中でこの曲が群を抜いて好きだった。好きというよりこの曲を一曲リピートしているととある情景が現れるのだ。
見上げると歩道橋の上には金髪の男の子が立っていた。強い風を受けて爽やかな笑顔の彼がわたしに両手を振っていた。しかしわたしは見えない振りなのだ。
”死にもの狂い”と声に出して言ってみる。
こんなはずじゃ無かったよと男の子は笑った。だけど誰だって困難を乗り越えようとひとたび決意したなら何がなんでも頑張るじゃないか。それが他人からはまるで狂ったように見えるかもしれなくてもさ。
そうだよ、”死にもの狂い”だよ。
spitzのこの曲の良さはイントロだ。下り坂をいくバイク。ドライブ感。
嘘じゃないんだよ。僕は未来の話をしたんだよ。ヒトはみんな死にかけてる羽虫にすぎない。誰もがみっともない格好でもがいてる。
僕等はどこまでも果てしなく続く丘の上に立つ。枯れることのない泉を探す。永遠に続く僕たちの日々。朝が来て夜が来て、また朝が来て夜が来る。
わたしは深呼吸、彼に笑顔を返した。お願いだから、頼むから飛び降りないで。
わたしは狂っていますか。
在りもしないものをいつまでも見ているんです。彼は笑顔です。だからわたしも笑顔を返したいんです。
そんな日常は結構な死にもの狂いかもしれないけれどセンセイには話します。
わたしは狂っていますか。