山崎青樹「古代染色二千年の謎とその秘訣」

ロブスタ種云々調査途上ではあったが先日は件のカフェでエスプレッソを注文した。先ずはグルグルグルとやる。黒い液体の表面で頑なにとどまるミクロの泡たちにおいロブスタよと呼びかけ飲む。deep & sharp & sweet & dark & ?。キレッキレ。脳にスパークしたわ。

冷たい北風が吹く頃は発色が良い。草木染めの年間スケジュールを制作中だ。原毛の掃除もせねばならない。勘を取り戻すというほど熟達していたわけではないがやることがあり過ぎて本当に楽しい。これこそが真の息抜きである。

1年は12ヶ月しかない。月に数日染色作業日を執るとして、素材の収集はそれに先行して山を歩くことになるから、たぶんもうきっちり何月何日ごろにはこれこれの木とこれこれの草を採るという計画書を作ることになるような気がしてきた。

草木染めはいいなあ。パンと違って染めあがりが失敗でも食べなくてもいいからな。染めた原毛はジップロックコンテナに保存だな。1年をかけてコンテナを積み上げようぞ。コンテナの蓋を取る。蘇る山々の色たち。決してその箱を開けてはなりません。浦島太郎がおじいさんになるからね〜

山崎青樹の古代染色の本は楽しい。彼は永遠に研究者だった。わからない言葉をネットで調べながら進む。媒染という概念。その土地その土地の泥や地下水には既に金属が解け込んでいる。草木を燃やして灰を作る方法もある。

この本ではないが先週は天然の金属素材をあれこれ調べていて草木染めからはだいぶ脱線した。孔雀石という青い石がある。マラカイトともいう綺麗な鉱石だが地中の銅が結晶化した二次鉱物。孔雀石いいなあ。一個欲しいなあ。

かつてはミョウバンであれこれと染めたものだが合成ミョウバンが素材を損傷するとは知らなかった。天然明礬石というものが地球の何処かにあるらしい。アルミ媒染を天然素材でしたければその種の石の粉を売る専門店があるらしい。

ph測定器を買うつもりであれこれ調べている。どうやら液状のものが使い勝手が良さそうだ。アルカリか酸か。草木の種類が媒染を選ぶのだ。草木が色を持っているのだから。でも石だって泥だって地球に在ったのだ。草が先か媒染が先かの果てしないループである。

カフェでエスプレッソを飲んだ日、三女と駅で待ち合わせ中の本屋で浅本充という人の本を買ってしまった。本屋で本を買ったのだから別に問題は無いのだがこの浅本充という人は今をときめくフードトレンドだ。

ママがこういう本を買うとはね。三女も困惑する。わたしもやれやれだ。なんたってこの本はおしゃれ過ぎるのだ。真ん中辺りの頁ではFaema e61という古いイタリア製のエスプレッソマシンで珈琲をなんやかんやしているよ。きっとお金持ちなんだな。うん。

美味しそうだな。ショートブレッドにはいっぱいのパルメザンとクミンを入れている。あのね、リコさんの棒パンにもチーズとかハーブとか入ってんで。ふと対抗したくなった。ふむふむ、この人は関東でお店をしている。エッセイも書く。捨て釜って何。ふうん、閉店後の余熱の残るオーブンのことか。‥‥捨て釜でグラノーラを焼く。いやお洒落やなあ。

パン焼き辞めたんだって?三女が言う。

うん。なんか焼けなくなった。

お酒も載っていた。バーボンでハイボールを作って生のミントを入れてグルグルグル。そこにカリブシロップを入れる。

カリブシロップ?なんだろうカリブシロップ。調べたらフランス製のサトウキビ液のことだった。カリブシロップは名前も瓶のラベルも可愛いものだった。

パンは焼かなくなったけどパンの周辺をうろうろしている。