Mr.Children 「ラララ」

https://www.instagram.com/p/0oVOrDFg2z/

 

http://youtu.be/9250O6XCYkQ

 

2月が終わり3月が来た。2月といえばエリカだ。寒い頃に満開に咲くエリカの花が大好きだ。いつか庭にエリカの大木を植えるというのが長い間の夢だった。ささやかな夢だ。なかなか叶わない。それがまた良い。

 

友人がMr.Childrenのベスト盤を貸してくれ毎朝聴いている。しょぼいスピーカーのしょぼい音で聴いているがベスト盤なのでそれが丁度良い感じがする。あり得ない感じに一生懸命に唄う桜井和寿の歌唱。なんでまたこの人はこんなに必死になるのだろう。

 

ベスト盤は2001年にトイズファクトリーから出た二枚組み。①1992-1995、②1996-2000。こうして聴いている新しい曲でもすでに16年前の曲である。それぞれのディスクには分厚い歌詞カードをふくめたライナーノーツが付いていた。

 

本が付いているということだな。ふむ。暇なのでライナーノーツを読んでいる。ふむ、Mr.Childrenのことを詳しく解説している。そうか、そんなバンドなのか。

 

三女を出産したころわたしはちょっとした左翼活動をしていた。もっとも自分にはそんな自覚はなかった。丁度そのころひとりの若い男性が家によく来ていた。友人の友人。友人たちはよく友人を連れてくるのだ。初めまして。はじめて会う人に食べて行きなよとご飯を出す。韓国人ならばそれは日常茶飯事である。

 

彼は20代前半。街ですれ違えばハッとしてしまうほどのハンサムな男性だった。当時のわたしには痩せているハンサムな男性をもれなく睨みつける癖があった。瘦せ型のイケメンは薄幸なことが多くそんな人を避けがち、わたしは狭量で利己的だ。

 

その日わたしの家で仕事絡みのわたしのもう1人の友人と薄幸のイケメンは期せずして夕食を共にした。2人は同い年。あろうことか彼女は薄幸のイケメンの住むボロい狭いアパートにその夜から転がり込んだ。どうやら瞬時にして2人のあいだに恋が芽生えたらしいのだ。

 

まあよかったじゃん、わたしは彼女と電話で話す。彼女は理不尽な不倫な別のイケメンにもう何年も有形無形の搾取をされ続けスッカリ疲れ切っていた。どうやらそっちのイケメンとは手が切れたらしい。

 

ある日彼女のお母さんから電話。彼女が大怪我をして救急搬送されたという。病院へ急ぐ。彼女は全身を包帯でぐるぐる巻きにされてベッドに横たわっていた。聞けば夜勤をしていた飲み屋の厨房の固形燃料が爆発し、その火災に巻き込まれたという。幸い命に別状は無かった。

 

ねえなんで?なんであの子が飲み屋で働いてんの?病棟のエレベーター前でわたしは薄幸のイケメンに詰め寄る。イケメンは言った。俺今無職なんだよね。なんでアンタ働かないの?いちおう働いてるよ、このあいだライナーノーツを書いたんだ。イケメンは照れ隠し煙草を取り出す。ふざけるな、何がライナーノーツだ、まだそんな馬鹿なことやってんのか。取っ組み合いわたしはイケメンを絞め殺す寸前で主人に取り押さえられた。

 

半年後結婚式。ライター崩れのイケメンはまだ無職。彼女は幾つものアルバイトをしながら彼を支援していた。2人を引き合わせたわたしは友人たちから戦犯呼ばわりをされたが彼女は満面の笑顔だった。誇らしげ、誰よりも美しく力強い彼女の笑顔にわたしは心を打たれた。

 

「ラララ」はいい曲だ。この曲に添えられた文章もいい。薄幸のイケメンはその後ライター稼業から足を洗い今は堅気の仕事をしている。

 

だからあれだな、2人は出会って良かったんだな。パトリックもジョージもまるで他人事だ。なるほどな。そんなふうに恋をしちゃうんだな。

 

おじさんたちはちょっと黙っててください。

 

わたしはしょぼいスピーカーの桜井のこの歌に耳を澄ましている。ラララ、ラララ。‥‥ラララ、ラララ。やっぱイケメンには要注意だな、うん。