宝島社「若冲ー名宝プライスコレクションと花鳥風月」

https://www.instagram.com/p/BFz9YU3Fgw3/

出来事の記録。午後三女とふたり三女の家の近くのカフェへ。バロックが流れている。カウンター席に座り飲み物をオーダーし、カップ&ソーサーを棚から選ぶ。三女のお気に入りはヴェルサーチ。絢爛豪華で趣味が悪い。

先週ここへ来た時はロイヤルコペンハーゲンだったから今日はマイセンだな。マイセンは深い丸底のお皿にカップが乗っかっているのが特徴だと教わった。色も形も様々なコーヒーカップの中にマイセンを捜すがやっぱりわからない。

珈琲は先週と同じスマトラマンデリン。なんで同じのを飲むの、と三女。わたしは答えない。先週飲んだあの味を自分がちゃんと覚えているかどうか、それを試してみたかった。

三女が先ほどからわたしに何か熱心に話し掛けて来ていた。しかしわたしはAmazonで購入したジャガイモの本に夢中である。ねえねえと三女がわたしの肩を揺すったその時だった。バリスタが唐突に「若冲です」と言った。

バリスタは店内を歩いて1冊の分厚い雑誌をわたしたちに開いてみせた。そこには上野の美術館で行われた「伊藤若冲展」が紹介されていた。三女は雑誌をぱらぱらとやり一枚の象の絵をわたしに見せた。熱帯雨林のジャングル。白い大きなアジアゾウを正面から見て描いたなんとも不思議な絵である。

こういうの好きなんですか?わたしはバリスタさんに尋ねる。そうですね、そう言ってバリスタはすーっとわたしたちから離れた。客が来たのだ。バリスタはお馴染みさんのそのマダムと今度は欧州旅行の話をしている。

バリスタってたいへんな仕事だな。何種類もの珈琲の味を説明し、高級カップ&ソーサーの解説をし、江戸時代の日本画にもヨーロッパ豪遊にも通じていなければならない。

わたしたちは店を出て本屋へ。そしてこの宝島社を見つけた。三女の好きな絵が載っていた。買ってあげるよとわたしが言うと三女はやったーとはしゃいでいる。本を買い本屋を出てスーパーへ。三女はわたしの好きなうずらフライを二本買ってくれた。

三女夫婦は来週神戸へ引越しだ。荷造りヘルプ。新しいアパートはオール電化なのでもう使えないからと婿がピカピカ光るフライパンをくれた。婿はシェフなので台所は業務用のグッズであふれている。

数日前、偏屈なわたしの数少ない知己であり、婿の母親でもある沖縄の友人と電話でなんやかんや話した。ねえ沖縄へ遊びにおいでよ。友人が言う。行かないよ、今年は四国へ行くんだよ。ふうん熊はどうしたの。話長くなるからもう切るよ。友人がまたね、と言った。うん、わたしも会いたいよ、と言うと友人は電話を切った。うん、この場合のまたねは社交辞令だよね。

夕ご飯はうずらフライが二本。ダイエット中の三女はヨーグルトのみ。

三女がわたしや主人、そして姉ふたりの誕生日を小さな手帳に箇条書きをする。午後1時、夕方4時、午後1時半、産んだ時間。わたしは三人の娘の出産時間を暗記しているのだ。まあだいたいの時刻である。三女はわたしを無視して覚え書きを続けていた。わたしは宝島社をぱらぱらと眺めた。

「鳥獣花木図屏風」。柔らかい若冲の動物たちの動き。あ、ロバもいる。熊はいないのかなあ。

極彩色。若冲さんなかなかいいねえ。