氷枕③

https://www.instagram.com/p/CEsq3Ikp9xP/

https://open.spotify.com/track/3g1lkUg0wDCV4OEHMRKO3d?si=lUwgE-SJTKyb6XKkGh0h1Q

カネコアヤノ'愛のままに'


外泊で静かになってしまった病棟を談話室へ歩いていたら見知らぬ女性に声をかけられた。彼女同じフロアの入院患者で自分は肝細胞癌で会社員をしていたと自己紹介をした。取り留めない会話のあと私は胆管癌で占い師をしていたと話した。当たるの?という彼女に当たるわけない、当たってたらここにいるわけない、と私は返した。ばちが当たったの?彼女は屈たくがない。私は彼女に好感を持った。日曜の夕方、同室のお婆さんたちが外泊から帰ったが私がお風呂に行っていたその間におとなしい方の膵癌のお婆さんが個室に移った。布団と私物がなくなった空っぽのベッドを見ていた私にあやさんがあの人は外泊のたびに鰻の蒲焼きを食べてくるから、と言った。鰻の蒲焼き食べれるなんて丈夫ですね、と私が返すと違う違う、もうお迎え来ることがわかって最期は鰻の蒲焼き食べるんだって言ってたよ。あやさんは消え入りそうな声だった。まだ会話が続くのだろうと私は身構えていたがあやさんはそれっきり眠ってしまったのだった。