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サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
あれ実話だよ。私がディズニープラスでサウンドオブミュージックを観たんだと言ったら友人が教えてくれた。ちょっと驚いた。トラップ大佐？そうだよ笑。午後はイキのいい子イカが安かったと友人が届けてくれた大量の子イカをトマト煮込みに。
子イカは三十杯ほど。イカの背にある透明な硬い筋を抜いては鍋にぶち込む。大蒜(にんにく)を10粒ほど剥いて鍋へぽいぽい。オリーブオイルで炒めて市販のトマトソースを1瓶ドボドボっと入れて煮込む。子イカどうした？トマト煮だよ。へーてっきり生食したかと笑。餌なの？
自分の感情を誰かにぶつけた経験がない。彼女が言った。イカのトマト煮込みの匂いが充満するリビングでzoom。夫にも？子どもにも？そう。待って、子どもの時は？親には？友達には？ない。私はふと人生に三回限り未来が見える力が与えられたと嘘をつく落語の噺を思い出し彼女に話した。
三回限りね。笑。三回限りっていうのが本当はあるんじゃない？私は再び尋ねた。彼女は黙っていた。難しい顔をしていた。彼女は過去を遡って何かを思い返していた。ため息をついたり座り直したりした。イカが仕上がって私は鍋から皿に取ってはzoomに戻った。もともと子イカなんだけどここまで縮むとは。煮込んだイカの小ささよ。言葉に詰まる。すると長い沈黙ののち、彼女がようやく口を開いた。…いいな、イカ。
