人見知り

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チコ&ジプシーズ「悲しき願い」

 

相撲ってさ、ひとたび土俵で取組が始まったら逃げ場所なんてないじゃない。四つに組んで、力技を掛けられて、ぐっと踏ん張るしかない。そういうとき、わたしたちってなにを考えるかな。

 

彼女はわたしの顔を、声を出さずに笑いながら、じっと見ていた。口角が上がり、左右の目袋のすぐ下に線えくぼがあった。うん、まあ、そうだろう、このおばあさんはおかしな話をするとでも思ったんだな。

 

逆にさ、土俵に上がって、行司が仕切ったのにいつまで経っても相手が一つも技を掛けてこない。戸惑うよね。

 

彼女は頷いた。人間て、おのれの考えや感情、価値観を誰かに伝えたいときにいろいろな方法を取る。言語、身振り、表情、声。賛同が得られるか、はたまた反論されるか、反論に値しないとされてスルーされるか。論理的文章を長々と書くのはおじさんの戦法なのね。

 

おじさんたちはなんとかして賛同が得たい。でも自分の感情を押し付けたくはないのね。要するに人見知りなんだね。だからひたすらレトリカルな戦い方を選ぶわけ。おいおい何言ってんの?ひとつも伝わってこないよ?そう言われることは分かってる。だから解るように解るように、まるで先ずはお堀を掘って、それからお城を建てるみたいにね。書くわけ。

 

ひとつも技を掛けてこない、闘志を示さない力士ってイライラするよね。ここは土俵だよ。わたしなら思うね。やるのか?やるのか?かかってこいよ、とね。

 

それはレスリングではないですか。彼女は小さな声ではあるが核心をついた発言した。