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サンダラパーク「イン・オア・アウト」
おさよさんと珊瑚は宮尾登美子著 新潮文庫「楊梅の熟れる頃」という短編集のお話のひとつである。わたしが好きな頁はティーンエイジャーの主人公が故郷を離れて人形作りの修行をする場面。それから珊瑚関係者というだけでいとも簡単に男に騙されてしまう場面。
短編集には「おきみさんと司牡丹」という話もあって、少し前に「恋愛小説が読みたい」という現国の生徒さん(塾の)と2人で読んだのだが、生徒さん(高校2年)はわたしにこう言ったのである。「先生は何故おきみさんの肩をもつんですか」。
我々はその日、彼女が音読をし、段落毎に質疑をしていた。おきみさんは女だてらに大酒飲みで「酒の上での失敗」も過去に数回。司牡丹という老舗酒蔵の賄いとして季節労働者をしているが、おきみさんと恒さんは毎年お給料日には決まって酒を酌み交わす。そんなストーリーである。
「相手は妻帯者ですよ、不倫じゃないですか」。高校2年は義憤を募らせていた。「なるほどなるほど、そうだよねえ。ん?わたしおきみさんの肩持ってるかな」。わたしが返すと彼女は言った。「持ってますよ。許せませんよ。酒飲みの女なんて」。なるほどなるほど。そうかそうか。わたしは唸るのだ。
宮尾登美子ってすごいな。文章を読んだだけで、高校2年にはおきみさんが眼前に現れたかの如くなってしまうようだ。わたしは彼女に尋ねた。「おきみさんは恒さんのどんなところに惹かれたんだと思いますか」彼女は一生懸命答えを探していた。授業はおわった。
だいぶ前のことだがわたしは土讃線をひとりで高知まで乗り継いだことがある。高知の空港で司牡丹を買って飲んだがなにやら甘いお酒だった。
おきみさんと恒さんは酒造りという志を共にして働く同志である。おきみさんと恒さんが恋をしているその対象は人ではない。司牡丹というお酒なんである。
それが正解です、なんつう大学受験問題はないよな。無いでしょうな。