紅の豚

街中をぶらぶらした。とにかく歩いた。大きなBOOK OFF。店内に流れる片付けが終わらない〜と繰り返し歌っている歌が気になり本棚に集中出来ない。辺りを見回すが誰もこの歌を気にしていない。elle table を百円で2冊買う。ペルー料理が載っていた。

美術館へ行く。絵は見ない。あちこちの美術館を行ったり来たりする巨匠たちの絵は滅多に見ない。微熱が出たことがある。身体にくるのだ。地下のショップで講談社学術文庫を一冊買う。小麦の本だ。

街の真ん中にはスケートリンクがあった。レディースデイ。500円か。少し悩んだが通り過ぎた。

大通り。路肩をロードバイクが行く。転ばないでね。雪が残っているよ。

本を持ってカフェ。紅茶がぬるい。クリスマスツリーがピカピカ光過ぎ。持ち込んだ本には目を通さず目を閉じる。

会計で端数の1円玉をゆっくり出していたが1枚足りなかった。あー、ないっ。小洒落た感じに髭を伸ばした店員を見る。笑ってよう。ここは微笑む。そうでしょう。

街に日が落ちる。夕焼け。またロードバイク。今日はレースなのか?

ジブリショップの前で小さな女の子が駆け足している。お友達が待っているよ。ようし入るか。ひとつひとつ眺める。カオナシの指人形。カオナシの爪楊枝入れ。大きいカオナシ。小さいカオナシ。柔らかいカオナシ。ゴツいカオナシカオナシが大好き。

驚いた。ポルコが貯金箱にされている。その上キーホルダーになってぶら下げられているではないか。この辱めは酷い。ポルコ‥‥。ポルコは耐えている。こんな風に飛ぶ日もあるさ。泣くんじゃない。行けよ。お前はお前の空を飛ぶんだぞ。ポルコがそう言って微笑んだ。うん。私は足早に店を出て夕焼けの街を再び歩きはじめる。ビルの谷間に日が落ちて行く。