2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

道端植物染色2〜羊の毛を染めるということ

わたしは竹中半兵衛が好きで、竹中半兵衛の隠遁地へ出向き、駅前の観光案内所のカウンターで半兵衛の名所巡りについて尋ねた事がある。 半兵衛への思い入れが強いわたしは銅像を見て気持ちが高ぶりこれより半兵衛に会いにいくの乗りになってしまったがその日…

パトリシア・ウェルズ著「シンプリー・フレンチ」

わたしの両親は飲食店を営む以前からもの珍しい食材を調達することを趣味としていた。 しかし何を持って珍しいというのかその定義は難しい。わたしの家の食卓はおそらくはニッポンの標準的な食卓では見られない珍しい食材に満ちていた。それらは我が家ではけ…

連載小説 小熊リーグ㉟

医大のクラスメートに医者という職業はヤクザな家業だと言った奴が居た。親父もその親父も医者だ。従兄弟も叔父も一族はみんな医者以外の職業をしたことがないから、医者以外の仕事は想像すら出来ない。親父もその親父も本心では職を失うのが怖くてたまらな…

多重人格NOTE その12 交代人格なるもの

多重人格の最たる「あるある」それは交代人格なるものであろう。今日はこれについて「わたしの場合」を書きたい。 わたしは友人に自分が多重人格障害であることをそれほど話してはいない。それほどというのは話していたり、話していなかったりである。ちゃん…

エレファントカシマシ「笑顔の未来へ」

https://www.youtube.com/watch?v=jHmpt5et9bk 林檎の記憶。 (親愛なるid:nadeshiko1110さんのコメントを読んで書こうと思いました) 紅玉という林檎がある。母がベニダマと呼んでいたのでわたしも今もベニダマと呼ぶ。酸味が強くて水分が少ない。アップルパ…

猫ヘルパー ジャクソン・ギャラクシー

出来事の記録。昨日午後のことだ。日没頃立っていられない程の吐き気でベッドに横になった。ほんの10分前まではキッチンを反復横跳びしながらチヂミを焼きつつスパゲティナポリタン(懐かしい感じのやつです)を作っていたというのに。 今日は明け方には早々と…

自由律俳句「浅い冬」

いつ見てもそこに在る蒼い山 今朝もはたらいている水を飲む 飛行機雲を見た少し休もう 長い長い橋の夢を見る 作り話だ行けるところまで 恋をして紙ひとえの幸せ 麦わら帽子干からびている 珈琲を測り母のことを想う お湯が湧くまで目を閉じるとする 満開脳み…

連載小説 小熊リーグ㉞

僕はにわかに信じ難い気がした。あの紳士然とした光盛医師が十代の風俗嬢に入れ込んで日常を持ち崩す。 「‥‥あの、それは、光盛さんは何かを発病したということですか」 父はその時のことを思い出したのか一瞬視線を泳がせた。父は動揺していた。そんな父を…

映画「ビューティフルマインド」を観ました。

わたしは幼い頃からほのぼのとした光景、何でもないような取り立てて誰かに話すことでも無いような瞬間、そんな日常が続く生活というにものに強い憧れがあります。上手く書けないけれど、そういう物たちこそわたしには長年決して手に入らないものと言う思い…

連載小説 小熊リーグ㉝

僕たちはその日から一緒に暮らすことに決めた。夕方、まずは彼女の実家を訪ねた。 彼女は一人っ子である。僕の話が終わると母親はわっと声を出して泣いた。しかし発病して1年間、これまで彼女の起こして来た自殺未遂を含む派手なアディクションに辟易してい…

連載小説 小熊リーグ㉜

その夜彼女は僕のベッドで朝まで一緒に眠った。彼女は眠剤を飲むと、僕に抱かれてすぐに眠ってしまった。眠剤を飲んだが全く寝付けなかった僕は朝方早く洗面所で歯を磨きもう1度ベッドに戻って、まだぐっすりと眠っている彼女にキスをした。 僕が初めてセッ…

連載小説 小熊リーグ㉛

僕は意を決して彼女に電話を掛けた。迷惑とかそんなことではない。彼女は極度の気分障害を起こしていたが、薬はそんなに沢山はないようなのでODを心配したのでもない。特別なことじゃない。なんでもないことだった。メールではなく、僕は彼女の声が聴きたく…

連載小説 小熊リーグ㉚

運ばれてきたパスタはクリームソースのショートパスタだった。 「これニョッキ?」泣きはらした顔で彼女が新海氏に尋ねると新海氏は頷いた。彼女はニョッキをフォークでひとつパクッと食べた。僕は安心した。そしてあることを思いついた。ボディバッグをがさ…

道端植物染色1〜草の名前

道を歩きながら木や草を眺めては染色を思い浮かべる。だけど煮汁に羊毛を浸してみないことにはどうなるかはわからない。乾かしてから煮るか、切ってすぐ煮るか、媒染剤は何を使うか、とにかく未知数である。 昔の人は染めた糸を機織りして布にした。格子柄に…

イヌを描きました

描きましたと言っても図鑑の写真の上にトレーシングペーパーを載せて輪郭を写します。それから描くわけですけど。 プーリーはハンガリーの牧羊犬です。プーリーとよく似た犬種にコモンドールがいます。コモンドールも同じくハンガリーの牧羊犬です。コモンド…

連載小説 小熊リーグ㉙

僕たちは駅前通り沿いの新海氏の馴染みの店に入った。空いていたボックス席に座ると店員がメニューを持ってきた。メニューには聞いたこともない片仮名の料理名が並んでいた。新海氏はその中の幾つかを選んで注文すると次にワインメニューを開きあまり迷わず…

連載小説 小熊リーグ㉘

新海氏の写真展にやって来る人々は若いアーチスト系の男女が多かった。ゲストノートに氏名を書く人がほとんどで、大半は新海氏の知り合いのようだった。 客が切れると僕はひとつひとつの写真の額を丹念に眺めた。それは山、湖、空、森といった風景写真だった…

学研パブリッシング〜クマを追え!ブレット―軽井沢クマ対策犬ものがたり

長野県の自然保護団体の初代ベアドッグブレットは亡くなっていた。現在はタマとナヌックという2頭のベアドッグが活動しているという。この本は児童書であるのでとても読みやすかった。読みやすいからといって内容が軽いわけでなく熊被害の現場の実情がひしひ…

平凡社 川島良彰「コーヒーハンター」

昨日は朝から河を渡り単独ポタ。14km。薄いTシャツを半袖長袖組み合わせて三枚着ていたが坂に差し掛かると暑かった。坂道をひとりよいしょよいしょと自転車を漕いでいるとごちゃごちゃとして騒がしい脳内がひとつにまとまってゆくようで心地よかった。 あま…

連載小説 小熊リーグ㉗

アパートを借りるに当たり通院に便利な場所を選んだ。白川医師の大学の付属病院へは自転車で10分。しかし今日は雨。普通免許も自家用車も持たない僕は雨の日は歩くしかない。 バス通りを学生の列に混ざり病院の建物を目指し僕はひたすら歩いた。付属病院は郊…

エレファントカシマシ「風に吹かれて」

http://youtu.be/TjgFJAm-Bno 出来事の記録。今朝はすき焼き風弁当。出来上がる頃に蓮根の斜めの薄切りを生のままどさっと入れて強火で炒り付ける。醤油を少し足す。見た目は蓮根は葱とそっくりだ。 家事を終えてエレカシのライブをYouTubeで聴きながら本を…

グラフィック社 浅本充 「a day in the BAKESHOP」

独りで何処かへ行きたい。診察でわたしがそういうとそれは死にたいということなんだろうと主治医が返してきた。わたしは大袈裟な、そうではないよと直ぐには言い返せなかった。 ごく最近だ。何処にいても居場所がない。落ち着かない。いやそれはおかしい。わ…

奇妙礼太郎「おおシャンゼリゼ」

岐阜県の下呂市というところにある白草山という山である。標高600メートルの林道脇の道路に車を路駐して三時間ほどで千メートル登った。圧倒的な山岳美である。 山頂で友人が携帯コンロでインスタントラーメンを作ってくれた。熱々のラーメンをすすりながら…

診察日(2015年11月)

午前中、田口護、旦部幸博共著「コーヒー おいしさの方程式」(NHK出版)を読む。 ロブスタ種100%のコーヒーはえぐいらしい。その土臭さ、カビ臭さを”ロブ臭”という。 ロブスタ種は悪者ではないと田口護さんは書いているし、旦部幸博さんはそもそもの種の違い…

連載小説 小熊リーグ㉖

「犬の世界では嘘つきは通用しません」ウィルドッグは毅然としてそう言ったのと胸を張った。どれだけの時間が経ったのだろう。僕が意識を消失してから、ウィルドッグとウィルベアが僕に成り替わり医師たちと話をしたようだった。白川医師は肘を脱臼したらし…

山崎青樹「古代染色二千年の謎とその秘訣」

ロブスタ種云々調査途上ではあったが先日は件のカフェでエスプレッソを注文した。先ずはグルグルグルとやる。黒い液体の表面で頑なにとどまるミクロの泡たちにおいロブスタよと呼びかけ飲む。deep & sharp & sweet & dark & ?。キレッキレ。脳にスパークし…

連載小説 小熊リーグ㉕

ウィルベアが叫び声を上げる。辺り一面にとどろき渡る遠吠えだった。ウィルベアが哭いていた。打つな、デポ注するな。僕はひたすら念じた。 「光盛さん教えてください。あなたがご存知でわたしたちが知らないことがあるのならば全て話してください」 驚いた…

Stingray ”Aqua Marina”(1964)

躁かもしれない。小説を書き始めると躁状態になる。躁状態でなければ書けないと感じる時がある。 少し前のことだが友人の声楽のコンサートへ行った。脳の病気を発病してからコンサートや演奏会を楽しむことがとても難しい。思いの詰まった音や声が脳に蓄積し…

連載小説 小熊リーグ㉔

父は言葉を続ける。 「俺たちは予告もなしに突然来た。悪かった。びっくりさせたな。お前も俺も精神科医だ。治療には順序があることくらいわかってるつもりだ。本来ならばこんな風に、大勢で、お前のところへ、来るなんてことはしてはいけないんだ。ドカドカ…

中根光敏「珈琲飲み〈コーヒー文化〉私論」

エレファントカシマシを毎日聴く。寝る前、起きた時、歩く時、走る時、何かを読む前、何かを書く前。9月に出た新譜「愛すべき今日」のPVをYouTubeで見る。ショートバージョンだがとても良い。「CD買えよ」。脳内でベアが言う。ベアの声は宮本さんだから。「…