2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

連載小説 小熊リーグ㉒

入院してひと月が経った。僕の脳内には少しずつ変化が生じていた。それはまるで朝が近い時間の空の色のように僕を惹きつけて離さなかった。待ち構えていた何かが薄闇に現れる。断片。その音、その匂い。それは剥がれ落ちていく。スクリーンに隠されていた秘…

多重人格NOTE その11 過誤記憶

多湖弘明「鳶〜上空数百メートルを駆ける職人のひみつ」を読んでいる。てっきり足場の写真集だと勘違いしていたがこれは鳶職人の男性が書いたエッセイであった。写真が素晴らしいのである。丸太足場は今も使われている。しかしこの本には丸太足場の写真はな…

Hugo Blanco〜Moliendo Café

コーヒーを調べているうちにだんだん逸れていってなんとはなしにコーヒールンバの替え歌を聴いていた。懐かしい。YouTubeには無かったけれど他にも替え歌を知っている。 今朝は冷え込んだ。出来事の記録。 昨日午後友人とふたり野山を歩く。 榛(はんのき)の…

山崎青樹「草木染め〜色を極めて五十年」

ここ数日小説作業の難しさから休息。一旦離れることにした。一旦離れるのは再開するためだ。 筒井康隆が昔何かのあとがきに自分がハッピーエンドを書かない理由について書いていた。ヒトが救済を求めるのはヒトに悲しみがあるからだと。そんなことを思い出し…

徳川義親「七里飛脚」

三女の家にテディベアが来た。グリュックという名の座高が1.2mもある大きなテディベアだ。友人からの贈り物のそのベアに抱かれるようにしてリビングでくつろいでいる三女からの写メを見てわたしはメールを返す。 どこで売っているのか。ふと思う。作るか。そ…

アメリカン・ケンネル・クラブ編「犬の事典」

完璧な一冊というものは存在しない。この七百頁を超える犬についての一冊もそうだが画像に依る詳細を廃し限られた文字数で如何に個体の特質を記すかという点で評価出来る本である。 カレリアン・ベア・ドッグは現在日本に2頭いる。カレリアン・ベア・ドッグ…

いなほ書房「エスプレッソーその味と香り」広瀬幸雄訳

近所の図書館が特別整理期間に入ったので昨日は隣の市町村の図書館へ行った。このいなほ書房のエスプレッソの本はとてもわかりやすい。 アントニー・ワイルドの珈琲の本は月末まで借りられるし、内容が高尚過ぎてなかなか進まない。まだ四分の一しか読んでな…

連載小説 小熊リーグ㉑

小路先生に小川先生に手紙を書きたいと言ったら書いてもいいよと言ったので書きます。先生が入院したと聞いてすごく驚きました。あの日診察室で先生がとつぜん怒鳴った時も本当にびっくりしました。小路先生によれば小川先生はたぶんそのことを思い出すこと…

連載小説 小熊リーグ⑳

2度目の入院は4人部屋で主治医は変わらなかったがケースワーカーは新海氏ではなく太田という中年の女性だった。新海氏は前と変わらず病院にケースワーカーとして勤務していたが長期休暇を取っていた。 僕のベッドはドアを入った突き当たりにあった。その4…

診察日(2015年10月)〜spitz「死にもの狂いのカゲロウの見ていた」

わたしがこの曲を初めて聴いたのはスピッツがまだインディーズレーベル”ミストラルズ”時代のアルバム「ヒバリのこころ」だった。 mistralはフランス語。ミストラルは通常冬から春にかけてフランス南東部に吹く。アルプス山脈から地中海に吹き降ろす冷たく乾…

Ruby Tuesday 〜The Rolling Stones 1967

出来事の記録。 昨日三女と散歩。ドブに赤いアメリカザリガニを見つけた。写真に撮ろうとiphoneを向けると鋏を振りかざして猛烈に威嚇してくる。わたしはゴキブリも蛇も怖くないがこの時はこれはひるんだ。わたしの中のベアーが今すぐアメリカザリガニを手掴…

旭屋出版「コーヒー&エスプレッソの教科書〜抽出・マシーン・焙煎の技術と科学」

サンダーバードに夢中の長女がサントラ盤のCDをリビングで流す。オーケストラの演奏するサンダーバードのテーマ。ここ最近の朝の家事のテーマ曲だ。 そう言えば昨日BOOKOFFでハノン500円だった。ハノンというのはピアノの教科書だ。食後のテーブルを片付けな…

連載小説 小熊リーグ⑲

「小熊を連れてる母熊は凶暴らしいな」マスターが言った。「うん、お母さん熊は小熊を護ろうとして必死だから」咲子さんが言った。 その時だった。突然ドアがバタンと締まる大きな音がした。くるりと店の入り口の方を振り返るとそこにあるはずのカフェの扉は…

足場解体作業を手伝いました

万葉集には秋の七草の名称だけを並べたという珍しい一首があるという。江戸時代には貧しい庶民までもが草木を愛でた。遺伝学など知りようもない園芸職人たちが朝顔の品種改良をした。 涼しくなったので散歩。道路の脇、公園。草の名前を思い出したくてちくま…

多重人格NOTE その10 治療同盟

精神科医はイケメンの方が良いか、そんな事を先日主治医と語り合った。精神科医は男性、患者は女性という設定だ。 もしも主治医がイケメンだと毎回の診察が心無しか楽しみになるから通院服薬等のコンプライアンスの向上がある、とわたし。まあ別にいいんじゃ…

連載小説 小熊リーグ⑱

「熊は悪い奴かもしれないけれど、それは家畜や人を襲うからだけじゃないの」カウンター席の僕の隣で咲子さんはそう言ってマスター特製今月のデザート、青カビチーズケーキをパクりと食べた。 「美味しいだろう、おい」マスターは彼女を顔を覗き込む。「美味…

「ウォルトディズニーの約束」を観ました

頭の調子が良くない。極彩色のはらはらドキドキの夢を幾つも見て夜中に目覚める。朝お弁当を作りながら頭の中の声に気を取られ気が付くと涙をぽろぽろと流していた。 最近よく蒸しパンを作る。テフロンのちょっと大きめのプリン型を6つ。ココナツ、黒糖、レ…

連載小説 小熊リーグ⑰

夢を見た。 僕と父は母の納骨を済ませ、墓地の駐車場で車に乗り込んだ。車を出そうとして後部座席に見知らぬ女性が座っていることに気付く。彼女が僕の名前を呼んだ。僕は快活に返事を返し会話が弾む。父も嬉しそうに会話に加わった。それが今さっきお別れし…

連載小説 小熊リーグ⑯

興奮していた。震えが止まらない。その時突然後頭部に刺さるような頭痛を感じてあっと言って目を閉じた。小さい火花が散るような、ピンと張られた薄い何かが裂けるような痛みだった。ザワザワいう音が近づいたり遠のいたりした。頭痛はまた来た。そしてまた…

シュタイフミュージアム監修「限定テディベアの世界」

昨日は自転車で図書館へ。市役所にも行かなくちゃならなかった。山道をひたすら下る。1時間も国道を走れば市役所と図書館のビルが見えて来る。 市役所のカウンターのお姉さんは先日と違うお姉さんのようだった。ちょっと安心。これもカウンター恐怖症と言え…