30分で120頁。コンビニで書籍のコピーを撮る。機械的に本の頁をリズム良くめくりコピー機のパネルをタッチしては脳内で北海道旅行の日程を思い巡らす。
いつも旅行のスケジュールは詳細まで決める。何日の何時にどこで何をするか。予算も建てる。
連れがある時は盛り沢山の旅行のしおりみたいなのをぎっちりと書いてコピーしてミーティング。たいていは盛り沢山のスケジュールはひとつ、またひとつと絞られてシンプルな日程となる。
数年前だ。北海道旅行を北海道出身の友人が計画した。わたしは当時北海道には興味は無かった。大自然とかノスタルジック小樽とか全く食指が動かない。その頃長女一家が北海道に住んでいた。そして友人の旅の目標は小樽で美味しい雲丹を食べること。まあそういうことなら行こうかと計画に乗った。
確かにあの時小樽で食べた雲丹は美味しい雲丹だった。
一週間という長い旅をしたのもそれが生まれて初めてだった。友人は荷物を行く先々の郵便局から自宅へ送る。スペースシャトルが使用済み燃料を次つぎと落とすようで小気味好い。
彼女はわたしが作る旅行のしおりをとても喜んだ。わたしは何分の何号の汽車に何番線のホームで乗り、切符代は何円ととにかく細かい。いつしかわたしは彼女の秘書のようだった。1日の終わりには会計清算。奢ったり奢られたりは一切しないのがルールだ。
旅行中時間を切って別行動することも珍しくない。彼女と2度目に北海道旅行へ行った時はわたしはあまり動かなかった。その時はひとつのホテルに8日間ステイだったからわたしは朝早くのんびり温泉に入り寝転がって本を読みつづけた。
彼女が北海道出身であることは知っていたがどの辺りに住んでいたのかまでは聞かなかった。彼女の生い立ちは非常に複雑だったのだ。3人目のお母さんはロシア人だし、2人のお父さんとはどちらとも幼いころに死別している。彼女にとっての北海道はお化け屋敷のようなところのようだった。
わたしは彼女の傍でお化けから逃げるように彼女を時間通り汽車に乗せた。カフェを捜しタクシーを拾いお土産を買い過ぎだよと彼女を諭す。
札幌ステイを決めたのは彼女がことある毎にこう言ったからだ。
札幌なんて何にも無いのよ。
何にもない。
本当かな。
朝はジョギングをするか。走るところあるかな。この日は汽車に乗る。何処へ行こうか。なんだか自炊出来る宿みたいだからシリコンスチーマー持っていくか。今回は北海道のベテランの居ない北海道旅行だ。いろいろと心配である。
札幌と言えば札幌オリンピック。
今日は繰り返し、懐かしい歌を聴いている。