4R4/14(カーマイン)

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リコさんのページのトウモロコシ粉多めのトルティーヤを焼きサルサとサワークリームで食べた。いつも通りの何も無い冷蔵庫だったが数日前に作ったフレッシュサルサとサワークリームがあり、棚の上にはコーンフラワーがあったのだ。久方ぶりに食欲が戻った。この数日毎日のように宅急便が届く。木彫り熊の配達はしばらくは無いと主人が言った。昨日届いた三体の木彫り熊にはおまけが付いていた。良かったらどうぞとメールにあった余分の熊はロシア製の木彫りのおもちゃだった。

向かい合う2匹の熊は手には卓球のラケットを持っている。台から出ているボタンを押すと熊はそれぞれ代わる代わる球を打つ。コンコンと乾いたいい音がして熊たちがピンポンをする。

バネの跳ね返りを利用して動くこうしたおもちゃはキネティックアートと呼ばれているらしい。

それにしても可愛いのである。おまけブラボーでしたねと主人とふたり取り合いで動かして遊んでいる。

昨日はもう1つびっくりするものを頂いた。若い友人の親族がこの春からインドネシアへ転勤することになり彼女はその間空き家になる東京のマンションに住むことにしたらしい。マンションの最寄り駅は山手線だ。わたしも東京ステイの宿舎として利用させてもらえそうだ。

6月‥‥7月かな。そっち行くからさ。暫くはお別れだな。なんか寂しくなるなあ。わたしはリビングでミスチルの替え歌をフルバージョンで披露した。

ミスチルの替え歌は現在2作目を製作中だ。ソファに寝転がってミスチルの歌詞を勝手に差し替える。冷蔵庫の扉をホワイトボード代わりに浮かんでくる言葉を書き留める。俳句を詠むのにどこか似ている。

友人が別れ際なにやらニヤニヤ楽しそうな顔をした。友人はわたしに小さくパック詰めされた珈琲豆を差し出した。コピルアクだという。インドネシア人の知人が持っていたのを分けてもらったのだと言う。

彼女にはこれまでわたしは何から何まで明け透けな話をした。ある時はDID、またある時はパン焼き。最近は珈琲のなんやかんや。彼女自身コピルアクは何度か飲んだことがあるらしい。何かにつけてポーカーフェース。その時もだからどうだ、取り立てて言うことなど特に無いという顔をしていた。

今日は朝からリビングでひとりその珈琲豆を眺めている。不揃いな豆の感じが本物っぽいではないか。飲むなら早く飲まないとな。猫の糞。それを思うと開封する気分にはなかなかなれない。それだけではない。ジャコウネコは何ゆえに珈琲豆を食べるのだろうとあれこれ思い巡らす時間を楽しんでいるのだ。挽いて粉状にしてしまってはそんな空想はもう出来ないだろうな。

ジャコウネコの手のひらはどれくらい。丁度珈琲豆を掴むのに丁度良い大きさか。次第にわたしの関心が珈琲豆からジャコウネコへと移っていく。わたしも1度食べてみたい。あの紅い豆を。枝からさ。

風邪ひきで部屋でゴロゴロしながら全盲の人が書いた本を何冊か読んだ。全盲で弁護士になった人や全盲同士結婚したカップル。一匹の盲導犬をペアで使う。中には盲導犬を1度使ってしまったらもはやイヌ無しでは歩けないかもしれないという、思ってもみない心配について語っているものもあった。

色について。色を見たことがない人たち。だけど僕は何度も話すんですが色の話を聞くのは僕はとても楽しいんです。ある男性が書いていた。

色を見たことがない人にどうやって色の説明をしたらいい。

珈琲豆の赤、鮮やかでくすみのない明るい赤。本当いえばわたしだってまだ本物の赤い珈琲豆を見たことはない。全盲の彼をインドネシアへ連れて行く。これがロブスタ。わたしは彼の手をロブスタの枝に触らせよう。

これかい、これが君が肩を持ってる悪い珈琲豆かい。彼が笑う。

4R4/14。カーマイン。わたしは耳元で呟くのだ。カーマインは色の名前。鮮やかな赤のことである。

DIDにもこんなスケールがあればいい。いや要らんやろう。嬉しい悲しい寂しい切ない。言葉で説明したらいい。‥‥それが出来たらねえ。2番は出来てるよ。ミスチルの「星になれたら」。53歳のわたしバージョンだ。

マジこりゃ誰にも聴かせられねー。