今度君に会ったら- aiko

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1月、5月、10月。数年前のいずれの沖縄旅行も雨。10月の時は台風の目がわたしたちの宿の上を通った。台風の目の直径は数十キロもあるそうだ。沖縄の友人とメールでやり取り。物件探すか?友人は引越しておいでよと言う。空気がいいし、食べ物もいい。それは無いよ。絶対に無い。わたしはメールを返す。

今日も1日孫の子守り。もう6歳だから特にお守りも要らない。まみちゃん(わたしのことだ)と一緒にいると喧嘩になると孫が呟く。長女が笑う。わたしは我が子にも大変厳しい親だったかもしれない。1度決めたことは滅多に変更はしない。ダメなものはダメだ。変更するような決定ならもともとしないからだ。

孫はわたしの真似をするのが日課である。木彫り熊の体高等計測するわたしを真似てテディベアの体高を計測している。前からと横からのスケッチをする。

わたしは男の子を育てた経験が無い。一時期友人の子(男の子)の騒動に巻き込まれたことがあった。友人は優秀な人だった。教員でやがて彼女は乳児院で勤務をし始めた。

彼女と出会ったきっかけを思い出せない。頭が良く情が深い。いつも熱心だった。どこへ行くにもお弁当を作って持っていく。そして彼女には男の子が1人いて、それは気だての良い品の良い坊ちゃんで、坊ちゃんは電車では目の前のお年寄りに席を譲る。

その頃わたしと夫はふたりでバンドを組んでいた。ギターはわたし、夫はボーカルとハーモニカ。聴衆はたいてい学習塾の生徒さんたちとわたしたちの娘たちが3人。元はと言えば小さな子どもを連れてはライブハウス通いが不可であり、それならば自宅をライブハウスにしてしまえと夫がやり始めた。

その友人の長男は何回かうちへ遊びに来てわたしたちのヘンテコ「おうちライブ」を聴く聴衆となり、そんな風に彼とわたしたちは仲良くなった。

やがて友人の長男は変化をし始める。中2だった。不登校になり、髪を伸ばし、ギターを弾き、ポイズンと書かれたTシャツを着たりした。わたしの家にあるCDを貸してと持っていく。彼はクラッシュやザ・ブルーハーツなんかがお気に入りだった。

ある夜彼がアポなしで突然やって来た。どうした?彼は左手の手の甲を抑えていた。見せて。彼の左手の手の甲には煙草の火を押し付けた痕があった。根性焼き。誰にやられた?自分でやった。彼はまっすぐわたしの目を見て半笑いしながらそう言った。

彼は何か苦しんでいた。それはすぐに発覚した。乳児院勤務の友人がひとりの孤児を里子にとったのだ。しかしそれはちょっとしたきっかけに過ぎなかったのかもしれない。

わたしも夫もカウンセラーでも世直し先生でも無いので根性焼きを見てもただ火傷の手当てをして終わりだった。

優等生だった自慢の我が子が破天荒なキャラへと日々変貌してゆくのを友人は嘆いた。ただし彼がアポなしでわたしたちを訪ねることを許したし、法に触れない範囲での彼の反乱を見守った。

彼を連れて夫は時にはライブハウスへ行った。ライブハウス好きがライブハウス通いの口実を与えられたのだ。友人の長男は自分なりのルートで歩みを始めた。やがて大検を受け大学を受験して大学生になった。

「今度きみにあったら」はKANの曲だ。まあこれもKANさんが歌うよりaikoが歌う方がびっくりするくらい良いのだ。

今朝この曲を聴いていたらあの時の彼の根性焼きをふと思い出した。ある日突然家族に加わった孤児を心から愛せない。彼は自分で自分を罰したのだろうか。

KANは誰かのことを心から愛することの難しさを歌った。それは大人だって簡単なことじゃないよと。

http://youtu.be/O-lcogjGUsI