天下一品

https://www.instagram.com/p/BLnioToB2wm/

(天下一品のこってり。こってりですよ〜〜)

天下一品ではレジ前に瓶のラムネが売っている。夏だけかと思っていたけれど冬近い寒い日でも瓶ラムネはあった。再生硝子の正にラムネ色の瓶がトロ箱の氷水の中で冷やされている。

天下一品へ行こうよ。元気が出ないとき、なんだかいろんなことが嫌になっちゃったとき、わたしと夫は天下一品へ行く。

もう10年以上前。わたしが発病したころ。病院帰り国道沿いの天下一品で遅い昼ご飯にラーメンを食べたことがある。当時営業職だった夫は天下一品を名前だけは知っていた。だけど1度も入ったことがなかった。

天下一品、すごい名前だね。うん、まあね。そんな会話をしているうちに天下一品だとお、いったい何が天下一品なんだとむしゃくしゃしてきたわたしは、では本当に天下一品なのかどうか1度食べてやろうじゃないかと夫に提案した。

泣いてばかり寝てばかり。当時のわたしはちょっとした家事をするにも疲れ切ってしまう日々。一方道順に慣れてきた夫は、病院帰りは必ず琵琶湖に寄った。ある時はランチに近江牛カレーを食べたし、季節になると長浜の黒壁スクエアで麩饅頭を買う。

わたしは外食が苦手で外食をして楽しかったと思ったことがあんまり無い。いやわたしはひょっとすると何かを食べるということが苦手なのかもしれない。脳の病気のせいだろうか。食べることなど金輪際御免だと考えることはそれはよくあるのだ。

だからその日、病院帰りのわたしが天下一品へ行こうよと言うと夫はとても喜んだ。そしてその日2人で天下一品でラーメンを食べ帰宅したがどんな味だったのかはさっぱり覚えていない。

一昨日の夜のことだ。唐揚げ食べたい。唐揚げいーねー。そんな会話をしながら図書館帰りに天下一品で夕ご飯を食べた。わたしはあっさり、夫はこってり。夫は唐揚げと白飯が付いてくるセット。わたしは160円でチャーシューのトッピングを追加した。

来たっ。褐色の汁をまずはひとくち蓮華で啜る。鶏出汁に薄口醤油が分子レベルで合体し、およそ古色蒼然とした安定のスープ。小口切りのネギとの相性も良く幸せなひとときである。

あっさりなのかなあ。これはあっさりなのかなあ。そんな疑問からわたしは夫のこってりをひとくち貰う。間違いない。こってりは味も香りもこってりであった。であればこちらは相対的に言ってあっさりでしょうな。

丼には麺も追加トッピングをしたチャーシューも姿が見えない。わたしがラーメンを苦手なのはここから、この背脂ぷかぷかの汁から取り出された麺の熱いこと。熱過ぎるよ、なにゆえにこないに熱い麺を食べねばならぬのか(とはいえぬるいラーメンというのもかなり考え難い)。

天下一品のチャーシューには甘い味が付いていない。天下一品のチャーシューにはどうやら2種類あり、単品のバラ肉のチャーシューというのもあるようだがわたしはこのラーメンにのっているやつがとても好きだ。

この薄い堅いチャーシューがすこぶる良い。噛み締めると味がするよな、いや、しないよな。薄さゆえどんぶりの中を当て所なく彷徨うこの硬派な加工肉はまるで海の中でも塩気を拒む海藻のように頑なだ。この簡素なチャーシューは断然「あっさり」の鶏出汁系スープが合う。違いますか、ねえ。

だいたい天下一品行って「あっさり」頼むとか空気読めよ、なのかい。(ダメだな。オチ弱いな、このラーメンレポ)。

てことで天下一品のチャーシュー美味しいよ!