診察日(2016年11月)

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今日診察日。

沖縄から帰ってからというもの、どうにも不安定なわたしが入院することに夫は賛成だ。主治医はDID患者のわたしに向いている近隣の病院を探してくれた。入院はしたくないとわたしは譲らない。入院は家族のためでもあると主治医は言った。

もしも入院すればわたしは”入院治療は病状悪化の結果を生む”というデータを書くだけだからね。わたしは言い張る。いや闇雲に入院を嫌がっている訳ではない。病棟のアンモニア臭と響き渡る奇声。精神障害者と一つ屋根の下で暮らしたことのあるわたしはそういうこと知ってるよ。しかも入院代は公的補助の対象にはならない。入院は金が掛かるのだ。

入院が嫌なら何処かへ1人旅に出たらいい、入院も旅行も変わらない、入院する金があるなら何処かへ旅に出るのはどうだと言ったのは主治医だった。琵琶湖のほとり、閑散としたビジネスホテルで2、3日ぼんやり過ごすのはどう?主治医が言った。

診察終わりの待合でおそらくは幾つかの精神障害を重複して患っている若い男性が、夫に近づきながら奇声を発する。隣に座っていたわたしは恐怖でワッと立ち上がり待合をウロウロする。済みませんと謝る彼の母親に夫は動じることなくにこにこと微笑んだ。

なんだか切ない。夫はわたしの付き添いでこの病院に来るたび障害者に囲まれる。聞けば彼とは何度かこの待合で会っているらしい。奇声はいつもの挨拶だったのだ。

わたし入院も旅行もしない。家でお利口にしてるから大丈夫。わたしは夫に訴えた。出来る限りの穏やかな日本語で丁寧に言ってみた。