ステイホーム⑫

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シモンズ'恋人もいないのに'


私が高校1年の時書道の授業が1年間だけあった。その時間は選択科目で音楽か美術か書道かの三択であった。教員は苗字ともファーストネームともおもはれないききつけぬ雅号の書道家だった。筆の持ち方筆先の置き方といふ書道のいろはにはじまる授業は回を重ねいよいよ浮き世離れを極め、課題が各々好きな字を書くなれば私の隣の席の女子は篆書(てんしょ)を選んだ(彼女は高校生にして既に書道家であった)。私は暫く教室の天井を見上げうなつていた。そうして手本集を繰って万葉仮名の頁をひらき書道家に我が課題の定まりしことつたふると書道家は其れは好いといふ。そうして私は漢文読み下し文と出会つた。