アミューズ・グル


https://open.spotify.com/track/4IRHwIZHzlHT1FQpRa5RdE?si=m0jVxgZmRWeCMsyHiUnrYA&utm_source=copy-link

グッバイ・イエロー・ブリック・ロード
エルトンジョン



エクレアはフランス語ではエクレール。「稲妻」という意味。ホテル技術教育リセの教科書によればエクレールもパータ・シュー。パータ・シューはシュー生地のことで、エクレールとシュークリームというのは原材料は同じなんだけど大福とご飯ほどに立ち位置が異なる。



古本で五百円で買ったリセの教科書は30年前のものだけど煩雑になりがちなフランス菓子の製法を論理的、実用的に体系化してまとめていて、これが非常に読みづらい。読むというよりは一つ一つの菓子の座標を見出す作業。まるで電話帳。



ロビュションのジャマンではアミューズ・グルにパータ・シューが出てくる(ってレシピ本にあります)。アミューズってのはコース料理の一番最初に出てくるものだから、ジャマンでは席につくとこのシューが出てくるんかな。よく読むとこのシューの生地にはすりおろしたグリュエールチーズが入っている。これはしょっぱい。リセの教科書ではアミューズのパータ・シューは一様に茹でて仕上げていた。



塩味のパータ・シュー…。ジャマンのつきだし…。オーブンで焼くやつ…。懸命な捜索が続く。辻調にグージェールというブルゴーニュアミューズ・グルを発見。「チーズ風味の小型シュー」という和名まである。こういうところ。いいぞ、辻調。



しょっぱいシューはイタリア・メディチ家の料理人ポペリーニ(いいな、この名前)がフランスに持ち込んだ。16世紀。それから数百年後、まだ10代のアントナンの製菓の師匠ジャン・アビス。彼こそが味なしのパータ・シューにカスタードクリームを注入した最初のフランス人なんだけど、アントナンはそんななんやかんやを目の当たりにした(……のかもしれない)。