くまのプーさん展に行ってきました

金曜日。長女と5歳と電車でくまのプーさん展に行った。片付けをしていたら長女が突然行くと言い出した。弁当持ちで電車に乗った。

 美術館にはくまのプーさんマニアの女の子たちとなぜか年配の婦人が多かった。壁一面のプーさんの世界。婦人たちは興奮して蜂蜜なのよね、そうよ蜂蜜なのよ、と謎のトークを繰り返している。

 わたしはくまのプーさん全集をまだぼちぼちと読んでいる最中だったから展示を少し身近に感じた。クリストファー・ロビンポートレートの前で立ち止まる。彼が学校へこっそり持っていったというピグレットのぬいぐるみの実寸大レプリカ。不細工な仕上がりだったので採用にならなかった第一号のピグレットモデル。かわいいけどな。

 わたしはディズニーが苦手である。

 なんだか自分には関係の無い世界だという気がするのだ。娘たちは年頃になるとディズニーランドやディズニーシーに遊びに行ったがわたしはなかなか行かなかった。

 高見山くらいの体のくまのプーさんのぬいぐるみと5歳と長女が記念撮影。ママも撮ればと言われたが断る。顔がずっとこわばったままだった。

 昼近くウォルトディズニー社のアーカイブ部門社員によるギャラリートーク。5歳と長女は最前列で聞いていた。通訳の男性が気になる。おかっぱくらいの長髪を整髪料でオールバックになでつけてあり、背広は大きめのダブル。ボタンは全部外している。眼光が鋭い。革靴は先が尖っていた。ウォルトディズニーというよりイタリアンマフィアだ。うんうん。面白い。なんか今日来て良かったよ。

 トークが終わりディズニー社のニックさん、ロバートさんと一緒に記念撮影をしたいという長女と5歳。サインももらうとはしゃいでいる。

 わたしは通訳の男性に彼等に幾つか質問をしていいかと尋ねた。当方は北海道の木彫り熊の研究者であると自己紹介をすると通訳さんは了諾、ふたりにすらすらカッコ良く木彫り熊を英語で説明してくれる。

 わたしはまずウォルトディズニー自身は熊という動物に個人的な思い入れがあったのかどうか、例えば動物園では熊舎のバックヤードへ入るというA・A・ミルンのようなことはしてのだろうかと尋ねた。

 通訳さんがほう、という顔をして彼等に尋ねた。ニックさんが言う。数々のドキュメンタリーをディズニーは撮ったが熊は無い。なぜ無いの?わからない。

 まだ質問をしてもよいと言うのでわたしはニックさんをじっと見てから尋ねた。ニック、貴方は小さいくまのぬいぐるみを手に持つと何を感じますか?

 ニックさんは少し遠くを見てから言う。なぜそんなことを聞くのか。わたしは言う。男性はみんなくまのぬいぐるみを好き。セオドア・ルーズベルトだってそうでしょ。

 すると隣に居たロバートさんが胸に手を当てて言った。オフコース、僕はくまのぬいぐるみが大好きさ。通訳さんが笑う。通訳さんがわたしに言った。欧米の男の子はみんなひとりに一つくまのぬいぐるみをプレゼントされるんだよ。へぇー。ニックさんはまだ笑わない。何かわたしをじっと見ている。もしかして、怒ってんですか?

 ふと見ると長女と5歳がそばに居ない。わたしは丁寧にお礼を言ってその場を離れた。会ったばかりニックさんとは思わずお別れに握手して仕舞いそうな衝動に駆られたがやめた。

 居た。

 何してんの?

 長女と5歳は来月の展示のポスターを見ていた。

 なぬ⁈

 アルプスの少女ハイジ展〜。

 ママどうしよう。長女は大興奮だ。長女はハイジマニアだ。ギャラリートークは宮崎駿かもよ〜。んなわけない。いや、わかんないぞ。

 わたしたちは人だかりをすりぬけるようにしてエレベーターに乗り込んだ。

 くまのプーさん

 ニックさんとロバートさん。それから怪しい通訳さん。

 どうもありがとうございました〜