難しいこと

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BEGIN'恋しくて'


いつものクリニックが休診だったので少し遠くの初めて行く診療所のドクターの顔がすごく近い。きっと私の白目に黄疸が無いかを懸命に調べているのだ。しかし私の眼はとても小さいのだ。何年か前沖縄でシュノーケリングがしたくてコンタクトを作ったが、そのとき新品のレンズをすんなりとは装着出来ないことを眼科医が嘆いたほど。先週CT検査。その病院にはコロナ患者もいるときいていたが病院は週末でガランとしていた。


骨折というのはCTには映りません。診療所のドクターが言った。またしても私の癌はCTではひとつも捉えられなかった。癌所見はありません。聞き慣れた言葉だ。では何故電話を?脇腹の痛みは骨折ではないかとドクターは言った。血液検査は骨転移による骨折を示す数値を示していると言う。


私はまだ〇〇さん(私のことですね)のことを何も知りません。〇〇さんはこれからどうしたいですか?…といいますと?私は尋ねた。詳しい検査をしたいですか?ドクターは今度は主人の方を見た。主人が私を見る。ぐるぐる〜。私はめまいである。


先生教えてください、こんな時いちばん避けなければならないことは何ですか、私がするかもしれない間違った選択は何ですか、それをしないようにします…。ドクターは私をじっと見て言った。僕にはまだなにも言えないんです、何故なら僕はまだ〇〇さんと出会ったばかりですよね、〇〇さんがどんな風に物事を考える人なのか、どんなことがいちばん苦手なのか、…何も知らない。医者としてではなく、一個人として言っていいのなら、僕ならば、…検査はしないですね。


咄嗟に私は吹き出して笑ってしまった。私も検査はしたくないです、だけどそれが一般的に言って愚かな選択だったら困るなって思ってそれで尋ねたんです…じゃあもう検査はここまでです、もうこれ以上はやんないことにします。ふと視線を感じてテーブルの脇に立つ看護士を見た。私お利口にしますから、検査はもう勘弁してください。看護士は笑顔になった。私も笑った。


こうして検査はしないというやりとりの後で私はこれまでやったことのある胃や胆管や大腸の検査名を羅列し、やらない?これもやらない?と五歳児のようにドクターを試した。やらない、やらないよ、やらない。そっかじゃあよかった!私ははしゃいだ。