シトロエン

海外ドラマ「メンタリスト」の主人公パトリックジェーンの愛車はシルバーメタリックのシトロエンDS21。1950年代に作られたフランス車だ。パトリックジェーンは弱々しく強い。矛盾しているようだが、つまりは打たれ強いのだ。最近、ごく最近だが、テレビをつけなくてもパトリックジェーンが現れる。幻視だ。そして彼は私の交代人格の1人となった。言い訳みたいだけどそうしたくてしたわけではない。当初はひどく混乱した。メンタリスト自体はそんなに面白いドラマではないからだ。

テレビドラマの登場人物が交代人格になることは珍しくない。私の可哀想な小熊の名前はジェリーだが、ドタバタ底抜けシリーズで知られるジェリールイスからのキャラクターであり、焚き火で焼かれた日に脳内人格に加わった。マリには別人格があって、名前をリンダローリングというが、これはレイモンドチャンドラーの小説の登場人物だ。脳内人格がスイッチングするというたいへんなややこしさだが、夢の中で夢を見るような感じだと理解していただければ嬉しい。

発病当初からの長年の主治医を理想化した人格もいる。ジョージピーターズだ。彼もまたレイモンドチャンドラーのキャラクターだ。確かもとは新聞記者だった。(レイモンドチャンドラーは20代の頃にコンプリートしている)JPは医学的な知識のアップデイトに忙しい。主治医に電話が繋がらない時にも便利な人格だ。

どうしてこんなにも外人、しかもアングロサクソン系なのか。女々しいことだが私の権力への憧憬には熱いものがある。支配され過ぎたせいだろう。誰かを支配したいのだな。白人至上主義はおそらく幼い頃見放題に見た海外ドラマの悪影響だ。お父さんがハリソンフォードだったらなあ、なーんて思ってたんだな。畜生こんにゃろうめ。そんな自分がみっともなくて恥ずかしい。

温和な言葉は岩をも砕く。本当の強さは秘められたところにある。パトリックジェーンの登場は変革をもたらした。私は夫を操りシルバーメタリックのトヨタウィルviを中古で手に入れた。クリフカットにまん丸ボディ。出来る範囲シトロエンに近い車だったのだ。私はviの助手席でブラックアウトした。パトリックジェーンがでたのだ。危うく無免許でハンドルを握るところだったそうだ。私は普通免許を持ってない。(なんで普通免許って言うのかな?むかつくな。普通は持ってるものなのか〜。)どうして無いかって?教習所で発作を起こして退校になったんだよ!運転、向いて無いですよ〜とやんわりと諭され、入金したお金は返してもらえた。DIDにはドラマがいっぱいだ。

シトロエンに戻ろう。

シトロエンにはまだまだ何か隠されている。

メンタリストを見た(それも一回だけ)時、シトロエンごと脳に入ったからだ。シトロエンDS21はハイドロニューマチックというサスペンションを装備している。乗り心地が特別らしい。タイヤがパンクしても3輪でしばらく走るらしい。絶体乗ってみたい。でも無理な注文だ。あきらめよう。

沈む気持ちで過ごしていたが、数日前のことだが動物園へ行った。動物園へはちょいちょい行く。私は動物の鳴き声の真似をする。得意とするのはフクロテナガザルだ。大切なのはキーだ。FかGだ。私が呼ぶと猿は近くにやってきた。一緒に行った三女は動画を撮っている。「母猿ではない」猿が言った。(ような気がした)

同じ日にジェットコースターにも乗った。むしゃくしゃしていたのでいろいろとやる。だいぶ緩めのものではあったがまあいいや。思ってたほどのアドレナリンは出なかった。午後ハワイ風のカフェで見たサーフボードに釘付けとなる。始めたばかりだがマリンスポーツが今とても気になる。

パトリックジェーンは言う。

本当に多重人格なのか?

JPは言う。

まあ仲良くやりましょうや。

会話日本語だね!あれー。やだこれ。変だよね。

吹き替えなの!

ちょいちょい英語も混じる。ちょっとだけどね。

脳内BGMは今日もない。

このところ音無しだ。

シトロエンDS21の風切り音を体感したい。

ウィルでいいですよ。

パトリックジェーンが笑った。