昭和40年代の北海道旅行ブームのころ、北海道土産といえば木彫りの熊であった。大きな鮭を丸ごと口にくわえ、四つん這いでがっしりと踏ん張る熊だ。
わたしが滞在した八雲町は木彫り熊発祥の地といわれている。わたしは滞在中木彫り熊資料館と図書館で出来る限り資料を見たり読んだりした。
まあ熊好きなのかな。
八雲町へはもう何回も行っているけど木彫り熊のことなんか1度も考えたことはなかった。温泉入って牛乳飲んでジンギスカン食べて、秋には浜辺のハマナスそれから鮭の遡上を橋の上から見る。鮭は夕方の4時半ごろにユーラップ川を泳いで上る。
木彫り熊を調べ始めたきっかけはなんだったのか。気付いた時にはかなりのめり込んでいた。
北海道と言えばアイヌだ。アイヌには熊は神様である。鮭をくわえた木彫り熊はアイヌ民族のオリジナルであり、北海道各地で作られた。わたしの知ってる木彫り熊はアイヌ民族の手の技だった。それでも充分好きだったのだけど。
だいたいそうだ。伝統工芸とか匠の技とか呼ばれているものが日本各地に存在するけどたいていは「大自然」だとか「時の流れの中で」だとかね。「つちかわれた」「素朴」「味わい豊か」。
栗きんとん。美味しいよねえ。
熊に戻って、ですね。
旭川をメインにアイヌ民族による作風の日本中に流通する鮭食い熊(これが名称なんだよね)もまたアートとしての側面を持つわけである。わたしも見たけど新千歳空港のお土産屋さんには赤や黄色にペイントされた木彫りの鮭食い熊が売っている。それはそれで可愛いかったり。全然オッケーな感じでしたね。巨体の鮭が熊にかぷって噛み付いてるやつもありましたよ。いや、欲しい〜ってなりましたけど。
八雲町の木彫り熊は今では旭川の鮭食い熊とははっきり別に腑分けされ、ちょっと八雲ブランド熊とでも呼べる、そんな風潮がある。
旭川でも八雲でも冬の間の農閑期の手仕事として木彫り熊は彫られたんだけれど八雲の資料館で見た昭和初期の木彫り熊たちは明らかに旭川の熊とは何かが違う、いや、これ、ちがーう、つってあたしは資料館で叫んでたわけです。
ひとことで言えば八雲の熊は(木彫りだよ!)可愛い。鼻が若干低くて、躰つきはまるっとしてて。
あら〜、八雲の熊〜、可愛いっしょ〜。
てことでこの記事は続きます。