Alone Again 〜Naturally

今日は診察日だった。切符を買おうとして所持金がまるで足りないことに気づく。うっかりしていた。行きの切符を買ったものの家に戻っている時間はない。朝早いためにATMも開いていない。戸惑うものの電車に乗りたい気持ちが勝って、とりあえずは来た電車に乗った。

どうしようか、ぼんやり考えながらギルバートオサリバンのアローンアゲインを聴いていたら脳内で声がした。

帰りは歩けばいいよ。

どれだけ歩く気だよ。それじゃ水戸黄門とスケさんカクさん御一行だ。

乗り換え駅でフラリと電車に乗った。これは結構遠くまで行ってくれる。でも病院はまだまだ遠い。

アローンアゲインは悲しい歌だ。

うさおはギルバートオサリバンが好きだ。うさおはそんな感じの柔和さと危うさを持っている。

iphoneで検索する。どこかで途中下車してATMを探す。あった。しかも改札前。一旦出るか。

病院てなんだろう。精神科治療ってなんだろう。

月一の通院は私を暗い気持ちにする。待合で小さな柔らかい丸パンを食べながら順番を待つ。何はなくとも腹ごしらえだ。

手短に言えば‥‥。

これは診察の始まりでのジョージピーターズの口癖だ。‥‥‥兎たちのことが話したい。私は話したいと思えば思うほど黙りこくる癖がある。‥‥‥特に心配はないでしょう。ジョージが微笑む。私の混乱に主治医は慣れている。

ジビエはどう?

主治医が言った。

ぶち込んで来たな。elleが笑う。

パンの話、していい?私はいつも的外れだ。パンはまずい方がいいの。なんでやねん、主治医は身を乗り出しふんふんと聞く。

ねえ、兎食べたの?フライデーが唐突に訴える。半泣きである。

絶対食べてるな。elleが頷く。

今すぐまとまらなくてもいい。必ずしもつじつまがあっていなくとも考え続けよう。そして楽しんで過ごそう。うさおはまとめ役。

ねえ、私は狂っているのかな。

毎回のように尋ねたくなるのだ。

だけど不安はない。いつものことだ。

‥‥‥帰るわ。

私は部屋を出る。たぶんここはBarなのだ。主治医はダサい白衣を着ているが手練れのバーテンなのだ。今夜はこの辺で帰ろ。

電車の中で再びギルバートオサリバンを聴く。

アローンアゲイン。

そうだ。これが私なのだ。