沖縄食材②

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(パパイヤの種)

スーチカーのことはなんとなく知ってたけれど食べたことはなかった。今回の浜比嘉島の沖縄郷土料理の店で定食のメニューに『スーチカーとオクラのアンダースー炒め』というのがありそれが初スーチカーだったのだ。

沖縄でも塩豚つくるんだ、と定食のスーチカーの皿を見ていたら娘たちが頂戴頂戴といったのでいいよと言うと皿の中のスーチカーを持っていった。食べてみたらスーチカーは思っていたよりも塩辛くなかったがアンダースーが甘しょっぱ過ぎてかスーチカーの旨味の感じはよく分からなかった。

沖縄には中身汁(なかみじる)というのがある。豚の内臓のことで豚の中身なので中身汁だ。初スーチカーの定食屋でわたしは初中身汁を試みた。油っ気が全くないスープで中身の種類は胃なのか腸なのか、それともどちらもなのかがよくわからなかった。モツは皆太めの千切りにされていたのが面白かった。

あとでウチナーの友人に訊いてみたが中身汁は下ごしらえに相当手間がかかるから滅多に作ることはないと言っていた。すりおろし生姜が添えてあったと言うと友人はその店をよく知っていて、あの生姜は内地の人のための臭み消し用だと言った。沖縄郷土料理はニンニクも生姜も使わないのだ。

沖縄のスーパーではビニール袋入りの下ごしらえ済みの『中身』をよく見る。わたしはモツ類が苦手だがとくに豚モツはキツい。親しい親族がとんちゃん屋をやっていて子ども時代韓国風の下味を付けた牛もつの網焼きをその店でよく食べさせてもらった。

家族も親族もその店をとんちゃん屋とんちゃん屋と呼んでいたがメニューのメインは牛もつの網焼きで、今思うとあれは飲み屋だった。わたしは二十歳になるまではカルビとかタンとかいうのを見たことも聞いたこともなくて、焼肉イコール網焼きの牛もつだと、長年そこは疑いもしなかった。

ニンニクや生姜を使わないでモツを食べるのはわたしには結構怖いことだが食べてみたら中身汁はとても美味しかった。生椎茸とこんにゃくがやはり太めの千切りにされて中身と同量浮いていた。

途中から生姜を加えたがそうすると逆にモツの風味が立つように思った。でもそれは味覚の口腔宇宙でモツの痕跡を辿ることをどうしてもやめられないからなんだと。だけどそうだとしてもそれでも中身汁は上品で旨いとしか言いようがない。中身汁は美味しい。

友人の友人が釜山からやって来て友人宅で夕ご飯を食べた。50代の韓国人夫婦だ。ゆし豆腐をスンドゥブ〜と喜んでいる。

テーブルにてんと何気なく置いてあるエゴマの醤油漬けを食べた妻が首を捻る。エゴマの醤油漬けは友人の大好物でわたしは丼一杯分の自作のエゴマの醤油漬けをリュックサックに詰め込んで飛行機に乗り沖縄入りをしたのだ。ちなみにこの韓国人夫婦は丼2杯分の手作り白菜キムチをスーツケースに詰め込んで飛行機に乗りやって来ている。

韓国人夫婦の妻はそれはわたしが作ったと言うと何が入っているのかを知りたがった。なんやかんや話した結果エゴマの醤油漬けにコチュジャンを入れるのは邪道であるということだった。畑で収穫したばかりの韓国の唐辛子を粉にして一緒に漬けると言った。

母はいつも市販のコチュジャンを入れていた。小さい頃からわたしはこればかり食べて来たがたしかに醤油漬けなのだからコチュジャンは余分だ。彼女にしてみたらコチュジャン入りのエゴマの醤油漬けは脂の浮いた中身汁くらい変なものだったのかもしれない。

シリアスな表情のわたしに妻は大丈夫美味しいよと言ってくれたがもう全然説得力無いし。

ねえなんて言ったのと友人が迫って来たのでとっても美味しいってさとだけ通訳しといたがマジ心折れたわー