グラッサージュ


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羊毛とおはな 120分のカセットテープ



近所に住む友人のガーデンからラベンダーを貰ってラベンダー入りショートブレッドを作った。友人らと夕方河原で温かい珈琲を飲んだ。ラベンダー入りのショートブレッドは予想外に好評だった。夕方の空が雲に覆われたので雨が降るかと尋ねたら雨の匂いはしない大丈夫だと友人らは悠々としている。はてさて雨が降る前の雨の匂いとは。



ショートブレッドと温かい珈琲の宴ののちは友人らは真顔で新顔のロードバイクの声を聴いている。そのロードは古いものだった。これは繊細だが男前な硬派なバイクだと友人らはめいめい徒然なるまま試乗に余念がない。やることがない私は背の低い彼(私と身長が同じ)の乗ってきたジオスに乗リコンビニにトイレを借りに行ったりした。




里子に出され私の家にやってきたズノウなるバイクはチューブラータイヤ。ワタシは一介のおばさんだし、ロードバイクの経験値が低い上にロード対応標準筋肉量が足りてないんである。初心者同然無人島で火起こしをするかの如く慎重にここまでの道のり、チューブラーニューフェイス君を走らせて来た。それに比べジオスのこの乗り易さ。トイレから戻った私は背の低い彼を一途に説得しズノウとジオスを交換し家に帰ってきたんである。




居なくなってみると寂しい…。背の低い彼は私にゴリ押しされ、ジオスを手放したことを非常に悔やんだ。では取りに来ていいから、と私は高飛車に言い放った。だが彼はじっさいチューブラーへの執着もあるのである。チューブラーかジオスか。さて背の高い者の一人は人生で一度もヘルメットを被って自転車を乗ったことがない。人の執着の有り様とはこれ如何に。




グラッサージュの語源は糖衣で覆う、のグラッセ。私と娘は艶々のグラッサージュの施されたフランス菓子を買いに行こうと目論見はじめるがさてどうなることか一個580円もするお菓子を買える筈がない。しかしながら私はフランス菓子に現実多少ならぬ執着を抱きはじめたのではなかろうか。とにかく美しい訳です。グラッサージュは。